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東急電鉄

地元を食べる 地元で食べる~地産地消にまつわる人々~

みずみずしい野菜や果物を作り続けている人たちがいて、その恵みを私たちのもとへと届けてくれる人たちがいる――。東急沿線で地産地消に取り組む、さまざまな人たちを紹介します。

VOL.9 仕掛け人 市原尚子さん 小林結花さん

PROFILE ● いちはらなおこ・こばやしゆか

今は中学生となった息子同士が小学校の同級生で、同じ地元のスポーツ少年団のサッカー部に所属。互いに陶芸が好きで意気投合したという二人。2014年8月に二子玉川のクラフトビールを造ろうと思い立ち、わずか半年で会社を設立。その3カ月後にはクラフトビール“フタコエール”と“ハナミズキホワイト(季節限定)”をお披露目するまでに。街にビールを楽しむ文化を根付かせたいと、理想の味を求めビールの研究と称しては飲み歩いています。

多摩川沿いの豊かな自然と歴史ある商店街、さらに近年は駅前再開発で活気づく“ふたこ”の街に、ついにクラフトビール会社が誕生しました。「二子玉川に足りないものは、ゆるキャラと地ビール! フタコエールでふたこの街にエールを送ろう」という、二人の主婦のつぶやきから始まった“ふたこビール”の誕生ストーリー。理想のビールを探して各地で飲みまくり。飲んで飲んで、また飲んで。そんな“ふたこ”の街とビールを愛するお二人に、二子玉川生まれのクラフトビールと地産地消への思いを語っていただきました。

本気度ゼロのプレゼンがいつしか本気に

「器が好きで二人で器を探しに出掛けていたのが、今はビールの飲み歩きに変わっちゃいました」と笑う『ふたこ麦麦公社』代表・市原尚子さん(右)と副代表・小林結花さん(左)。
「とりあえずさ、どうやったらできるのか調べてみるだけでもいいじゃない」とみんなに励まされ、あれよあれよと始まってしまった地ビールプロジェクト。

――なぜお二人は世田谷産のビール造りを始められたのですか? きっかけを教えてください。

市原 ビールを造ろうと思ったのは、実はその場の思いつきなんです。仕事帰り、夕食の準備をするまでの時間を「夕暮れ女子会」と称してサクッと一杯飲んでたわいもない話をする定例会のようなものを開いていて、そこでよく口にしていたんです。「ふたこに地ビールがあったらいいね」って。

――ただの飲み会での話から始まったということですか?

市原 ちょうど「フタコのへや」という地域住民の活動拠点となるコミュニティースペースのオープンが重なって、「フタコのへや」主宰で息子たちのサッカーのコーチでもある佐藤正一さんから、「オープンイベントで何かプレゼンテーションしてよ」と誘われたんです。佐藤さんからお呼びが掛かったら断れないなーって思いながら、イベントのにぎやかしになるならと軽い気持ちで参加しました。

小林 それで、日ごろ話していた、「ふたこに足りないものは地ビールとゆるキャラだ!」ってプレゼンしたんです。でも本当にビールを造ることになるとは思っていませんでした。そもそも私なんか最初はビールがあまり好きではなくて、スパークリングワインを飲んでいた人なんです。

市原 申し訳ないんですけど遊びだと思っていたので、その時は本気度ゼロ! 私たちにとってはイベントでのプレゼンテーションでこの話は終わりだと思っていましたから。ところがプレゼンの後に「地ビールいいよね、やりなよ」と意外な高評価を得て、じゃあちょっと調べるだけ調べてみようかってその気になり……。

小林 二人とも行動が早いので、翌日にはビール研究と称して、ビアパブへ出掛けていました。

絵に描いた餅が食べられる餅に

「ビアパブにいる人たちって、お客さんも含めてみんなが仲間のようで優しいんです」と声をそろえる市原さんと小林さん。「こっちのビールも飲んでみる?」と、初めて会った人と味見し合うこともよくあったそう。
絵に描いた餅がついに食べられる餅に。第一弾となった“プレふたこエール”の瓶のラベルには“麦”をもじってバクのイラストをデザイン。
「花みず木フェスティバル」では二子玉川公園会場に出店。二子玉川駅未公認キャラクター「ニコタマ星人」とふたこビールが揃いぶみ。

――プレゼンテーションが大成功したわけですね。

市原 その「フタコのへや」のオープンイベントのテーマが「住民の夢を実現~絵に描いた餅を食べられる餅に」なんです。プレゼンテーションで終わりにならなかったので、それでまずは情報収集と思い“ブルーパブ”と呼ばれる、小さな醸造所とカウンターなんかがあって、販売もしているビアパブ巡りを始めました。

小林 クラフトビールのブームもあって、全国各地にブルーパブはたくさんあるんです。ホント、数え切れないくらいに回ったよね。

市原 土日はすべてビアパブに捧げました。

小林 都内だけでなく、日帰りで甲府とか大阪にも。

――それはすごい! お二人にかかれば、夢があっという間に形になりそうです。

市原 でも最初は何も知らなくて。今思えば、よくあんな恥ずかしいことを聞いていたと思います。ビアパブの方たちの親切に助けられ、造り方、機械、費用と調べていくうちに事業プランが形になり、醸造も販売も個人より組織の方がスムーズだということで会社にしました。

――『ふたこ麦麦公社』とは変わった名前ですね。名前の由来について教えてください。

市原 “電電公社”ってありましたよね。“公社”って響きがみんなの会社って感じじゃないですか。みんなのための会社にしたいなという思いがあり、その名前をヒントにして、ビールだから麦ということで“麦麦公社”。実は1秒で決めちゃった名前です。

小林 設立記念日は2月5日。“ふたこ”って読んでくださいね。この日はほかの仕事がどんなに忙しくても、自分たちが造ったビールで乾杯をする日に決めたんです。

――半年で会社を立ち上げ、ビールを造ってしまったんですよね。出来栄えはいかがでしたか?

市原 2014年8月に「フタコのへや」のイベントでプレゼンをして、最初の仕込み分として330ml入りの瓶ビール “プレふたこエール”40本ほどが出来上がったのが11月でした。数が少なかったこともあり、いろんな方に飲んでいただいたら、あっという間になくなってしまいました。始めた当初は本当にできるんだろうかって半信半疑でしたし、その不安は今もあるんですが、それでもこんな短期間でよくできたな、と思っています。しかもその時に飲んでいただいた方の中に「せたがや自然農実践倶楽部」の方がいらして「世田谷産のホップを探しているんならあるよ」って。まさに奇跡的な結び付きも経験しました。

小林 その後2015年の4月29日に開催された「二子玉川花みず木フェスティバル」と「青空アート&マート」に参加し、定番のエール“フタコエール”と“ハナミズキホワイト”の2種類をお披露目しました。特にミカンやコリアンダーなどのスパイスを使い二子玉川の街に花みず木が咲く頃をイメージした“ハナミズキホワイト”は、どんな味になるか私たち自身もチャレンジでしたけど、いい感じにできたんじゃないでしょうか。

市原 5月からは二子玉川駅周辺で生ビールで飲んでいただくことができるお店もできました。「ドラフトクラフト」と「ドラフトキング」で生の“フタコエール”を、「ニコキッチン」と「BOBOS」で瓶の“フタコエール”を飲むことができます。自分たちで点数をつけるのは恥ずかしいですが、努力のかいあって、おいしいビールができたんじゃないかと。あとは皆さんに気に入っていただける味なのか、いろんな評価が聞きたいです。厳しい意見でも構わないので、会社のメールアドレス宛てに送っていただければ、これからの参考にさせていただきます。

世田谷産のホップと麦で造る地産地消ビール

上に向かって伸びるホップはグリーンカーテンにも最適。翌年の仕込みに向けて、「せたがや自然農実践倶楽部」ではホップの作付面積を大幅に増やしています。
ビールの苦味と香りのもとになる、松ぼっくりによく似た形のホップの「毬花」。

――“ふたこビール”は二子玉川で造っているのですか?

市原 今は茨城県にある醸造所を借りて造っています。でも地元で造ることにはこだわりたいと思っているので、いずれは二子玉川で、と思っています。

――原料の大麦とホップも地元産にこだわっているのでしょうか?

市原 もちろんです。ふたこの地ビールを名乗るからには、大麦もホップも地元で、と探していた時に出会ったのが「せたがや自然農実践倶楽部」さん。最初は世田谷区で大麦とホップなんて無理かな、と思っていたんですが身近な場所にありました。“フタコエール”と“ハナミズキホワイト”には、ここで作っていただいたホップを使用しています。

小林 ホップの苗を配布して、皆さんが育てたホップを集めてビールの仕込みに使おうという循環型プログラム「世田谷ホッププロジェクト」もスタートしました。ゴーヤを使ったグリーンカーテンはよく知られていますが、ホップもツル性なのでグリーンカーテンにすることができるんですよ。夏には世田谷中をホップのカーテンにして、収穫したホップの実をお持ちいただくことでビールと交換できないかと考えています。まだ始まったばかりのプロジェクトなので、そうなるまでにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、考えただけでワクワクしませんか。ホップの実の実物を見たことのない人が多いと思いますが、軽くて風に吹かれる様子なんかもかわいらしいんですよ。

――大麦の生産でも「せたがや自然農実践倶楽部」さんと協力されているのですか?

市原 そうです。いずれはビールの仕込みの全量を賄えるようにと相談しているところなんです。しかも「せたがや自然農実践倶楽部」さんの大麦とホップは無農薬で無化学肥料栽培なんです。

夢が膨らむ地産地消のビールと地産地消の農園レストラン

二子玉川らしい、シンプルで洗練されたデザインのボトルが印象的です。現在の季節限定は「サンシャインゴールド」。
ふたこビールを飲むことができる「ドラフトクラフト」店内にはポスターもディスプレイされ、地元のビールならでは。

――目標としていた地ビールが完成しましたが、お二人のこれからの目標をお聞かせください。

市原 おいしいビールを造る、ということは今も変わらない目標なんですが、それって、ただビールが飲みたかっただけじゃないんです。街でビールを楽しむという文化を広めたいと思っているんです。あちこちのビアパブを飲み歩いて感じたのは、ビールにはみんなが自然に一つになるという力があるということ。私たちが的外れな質問をしてもビールを愛する仲間として温かく迎えてくれましたし、同じようにビールを通じて地域が一つになったらいいなと。「フタコエールでふたこにエールを送ろう!」ただのダジャレに聞こえるかもしれませんが結構本気なんです。

小林 世田谷中がホップのカーテンで覆われたらすごくないですか。しかも、自分で育てたホップがビールになって飲むことができるようになるなんてすてきだなと思います。

市原 なかなか醸造所の条件に合う場所が見つからないのですが、地元産のホップと大麦を使い、地元の醸造所でビールを造ることができたら、その次は地元の食材を使ったビールに合う食事ができる農園レストランとか、また音楽も楽しめるライブハウスとか、妄想がどんどん膨らんでいるんです。

――地産地消の食事と地産地消のビール。そんな場所ができたら、ぜひ行ってみたいです。

小林 そのためにもたくさんの人に「おいしい」と笑顔になっていただけるようなビールを造らないといけないですし、もっとたくさんのお店で“フタコエール”が飲めるようにしたいですね。

市原 無農薬、無化学肥料のホップと麦を使い、地元の醸造所で造る地産地消のクラフトビール。それができたらきっと日本中が注目しますね。思い立ったことはすぐに行動してしまう二人なので、早く実現できるように頑張ります。皆さんもどんどん私たちが造った“フタコエール”を飲んで、一緒に盛り上げてください。

ビールっていうのはやっぱり人を呼ぶよね。特に自分で作った大麦とホップが入っているからおいしさも違うし、引きつけられるものがあります。

この農園を始めた時に、いつかこのホップでビールを造ってみたい、そう思ってホップを植えたんですが、それがこんなに早く実現するとはうれしい限り。『ふたこ麦麦公社』には大きくなって二子玉川の名物になってほしいと思っています。

地域の農家も巻き込んでホップと大麦を世田谷産で全量賄えるよう協力できたらいいよね。自然農の大麦とホップを100%使うビールなんて世界でもないんじゃない。オーガニックの上を行くナチュラルビールなんだから。

せたがや自然農実践倶楽部
井山 ゴンジさん

2009年にオープンした「せたがや自然農園」は、世田谷区に辛うじて残っている貴重な農地で、約80名ほどの会員が農園ライフを楽しんでいる自然農園。「大切なのは種。市販の種は肥料を使うことを前提だから肥料をあげないとほとんどが駄目になるけど、生き残った一握りから種を取ることを繰り返すと3年目には野生を取り戻し強い種になる」と井山さん。肥料と農薬を使わない、土を耕さない、草を抜かないというユニークな農法で、草が生い茂った、畑とは思えない不思議な光景が広がります。

更新:2015年8月5日 取材:2015年6月

東急沿線 地産地消マップ
特集「地元を食べる 地元で食べる」で紹介してきた東急沿線の地産地消スポットをGoogleマップでチェック! 各ポイントをクリックすると、写真や詳細情報を見ることができます。

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