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東急電鉄

落ち葉堆肥から始まる“完全循環型の公園づくり”を!

街×人 インタビュー 中目黒公園『有機クラブ』 岩井 勝男さん・北鬼江 いよりさん・磯部 日出夫さん

四季折々の花や生き物を見ることができる中目黒公園で、落ち葉から堆肥を作り、無農薬の野菜を育てている『有機クラブ』。地域の親子を招いて行う野菜の収穫体験や試食会、毎年1月に行われるどんど焼きなど、年4回のイベントを実施することで、地域との交流を深めています。今回は中心メンバー3人にお集まりいただき、参加したきっかけから活動への思いなど、たっぷりお話を伺いました。

  • 岩井 勝男さん
  • 北鬼江 いよりさん
  • 磯部 日出夫さん

岩井 勝男さん、北鬼江 いよりさん、磯部 日出夫さん

いわいかつお
中目黒公園の落ち葉などを集めて肥料にする「落ち葉堆肥づくり」の担当者。実家は農業を営んでいた。趣味はビデオカメラによる動画撮影で、8ミリビデオの時代から半世紀以上も続けているそう。
きたきえいより
『有機クラブ』の4代目会長で、運営を取りまとめている。ここは「たまたま好きなことが重なった人が集まる場」。程よい距離感で人がつながることができる取り組みにしたいという。特技は30年続けている編み物。
いそべひでお
野菜づくりの中心メンバー。「いそべ(磯部)」という姓をもじり、「あそべ(遊べ)」と自称するほど遊ぶことが好きだとか。スキー、釣り、山にメンバーを誘うことも多く、「ここは仲間を作りに来る場」というのが信条。

落ち葉を集め、堆肥を作り、野菜を育てる、完全循環型の活動

4代目会長の北鬼江さん。「会長となっていますが、実際はただの使い走りですよ」と笑って謙遜するオチャメな一面も。
磯部さん。独学で勉強した野菜づくりの豊富な知識で、『有機クラブ』の中でも一目置かれる存在だとか。

――そもそも『有機クラブ』の活動はどのように始まったのですか?

磯部 実は私たちは2代目、3代目のメンバーなんですよ。会長の北鬼江さんも4代目。初代の人たちとはほとんど会っていません。ですから、どのようにして活動を始めたのか詳しい事情は知らないんですよ。

北鬼江 私は先代の人たちから、中目黒公園が開園して2年たったころ(2004年)に、「落ち葉堆肥を作りたい」という地域の人たちが集まって、目黒区に申請をして活動が始まったと聞いています。

磯部 活動が始まってからの大まかな流れとしては、まず公園をキレイにするために落ち葉を集めた、その落ち葉で堆肥を作ろうという話が出て、そこから野菜を作ったらどうだろうと話が進み、今の活動スタイルになったそうです。

――最初に落ち葉集めがあって、だったら堆肥を作ろうと。さらに堆肥があるなら野菜を作ろうと?

岩井 そういうことです。大切なのは“循環している”ということですね。公園の木々から落ち葉や枝が落ち、それをわれわれが集めて堆肥を作る、さらにその堆肥を木々や野菜に戻す。こうして公園からゴミを出さない完全循環型の公園づくりをするというのが、先代から続いている『有機クラブ』の活動の軸となる考え方です。

北鬼江 ちなみに、私たちの活動の柱となるのは、「落ち葉堆肥づくり」と「野菜づくり」、そして地域の人と一緒に行う「イベント」。この3つを活動の中心に据え、日々の作業に取り組んでいます。

地元では有名人。自宅ビルの屋上一面が庭園に!?

農家出身だという岩井さんは、落ち葉を発酵させる時の独特のあたたかさやニオイにも幸せを感じるそう。
今回のインタビューは、会場として中目黒公園内の「花をみどりの学習館」にご協力いただきました。北鬼江さんと岩井さんが「花みどり人講座」を受けた場所です。
インタビューの途中、お手製のハーブティー(ビワ、クワ)をいただきました。クセのないやさしい味わいで、体にもとても良いお茶だとか。

――皆さんが『有機クラブ』に参加されたきっかけは?

岩井 ぼくは60歳を過ぎて、リタイア後に何をしようかと考えている時に、たまたま目黒区の高齢者センターが開催していたイベントに参加したんですね。そこで中目黒公園内にある「花とみどりの学習館」で行われている園芸講座「花みどり人(はなみどりすと)講座」のことを知り、思い切って参加してみたのです。それまで野菜づくりには全く興味がなかったのですが、講座に通い出すと、だんだんのめり込んでいって(笑)。それで講座が終わった後、同じ中目黒公園で活動している『有機クラブ』に入りました。

1年かけて自然環境を考えた園芸の手法などを学ぶ目黒区主催の講座。ボランティア育成も兼ねている。

――磯部さんは?

磯部 私は『有機クラブ』に参加するよりもずっと以前から、自分の家の屋上で野菜を育てていたので、その流れで自然とクラブに参加することになりました。

北鬼江 磯部さんのご自宅はこの辺りでは有名ですよ。鉄筋ビルのご自宅の屋上全部を畑にしていて、真冬の今でも野菜が一面にできているほど。新聞社などからも取材を受けているそうです。

磯部 もともと私は農業が好きで、若い時も農業の仕事に就きたかったんですね。でも家の事業で建築の仕事に就かざるを得なかったので、退職した後は好きなことをやろうと。それで自宅を建てる際に、設計の段階から屋上庭園を取り入れて、完成後は思い切り野菜づくりを楽しむことにしたんです。

――野菜づくりのどういったところに魅力を感じるのでしょう?

磯部 野菜はウソをつきませんから。愛情をかければかけるほど育っていく。でも、ちょっとでも放っておいたら食べられるものになりません。そんな正直なところが好きですね。ちなみに家でも肥料を全部自分で作っています。落ち葉堆肥も作りますし、魚粉(肥料)を作ったり油かすで“ぼかし肥料”を作ったり。自宅の肥料づくりで得たノウハウを、『有機クラブ』の活動でも役立ててもらっています。

岩井 もう全部磯部さんにお任せですよ。われわれは指示に従うだけ(笑)。とても助かっています。

――北鬼江さんはどうして参加を?

北鬼江 私も岩井さんと同じように「花みどり人講座」を受けていたので、その講座が終わった後、『有機クラブ』に参加しました。私自身はむかし薬学を学んでいたこともあって、落ち葉の発酵にはとても興味があったんですね。あと、もともと植物が大好きでしたから。自分にぴったりの活動だと思ったんです。

野菜づくりのスケジュールは、“超”がつくほど綿密に!

地域の親子と一緒に行われる夏野菜の収穫イベント。取れたての野菜を使った料理も試食できるとあって、保護者にも大人気!
冬のどんど焼き。畑で里芋や長ネギなどを収穫して「いも煮汁」を作ったり、お正月の注連(しめ)縄などを燃やして一年の健康を祈ります。
野菜づくりの計画表。どの畑にどの野菜をいつ植えるのか、一年のスケジュールが細かく書き込まれています!

――活動の柱である「イベント」についてお聞きします。年に4回ほど開催しているそうですが、具体的にどういったことを?

北鬼江 まず5月に地域の子どもたちと一緒にトマトやキュウリなど夏野菜の植え付けをします。それで7月になったら夏野菜の収穫イベント。自分たちで植えた野菜を収穫して、その場で切って料理して試食します。これは以前「とくらく」でも取材していただきましたね。その後、10月にはサツマイモ掘り、最後は1月のどんど焼きとなっています。

――野菜の収穫イベントもあるということは、野菜を育てるスケジュールを綿密に立てないといけませんよね?

磯部 おっしゃる通り。年間で計画を立てるのですが、その際、同じ野菜を連続して育てることで起こる「連作障害」にならないよう注意したり、植物同士にも相性のいい悪いがあるので、その組み合わせも配慮したりしながら、いつ何を植えるかを考えなければいけません。そのため、綿密に計画を立てる必要があります。これが年間のスケジュール表です(写真)。

――うわー! すごく細かく計画されていますね!

岩井 あと、野菜を育てるためには肥料も必要になりますから、計画に合わせて肥料をいつどれくらい作るのかも考えて作業しないといけません。

――地域の方々にイベントで喜んでもらうために、皆さんいろいろ苦労されているんですね。

北鬼江 でも、野菜の収穫イベントなんかで子どもたちがものすごく喜んでくれる姿を見ていると、いろいろな苦労はふき飛びますよ。

岩井 ほんとに。今はもう子どもたちに喜んでもらうために一年間頑張っているようなものですから(笑)。

磯部 定期のイベント以外にも、いろいろと地域の方に畑に来てもらう機会も増えています。例えば、昨年デイサービスからお年寄りの方が遊びに来てくれましてね。その時のお年寄りの反応がうれしかったですよ。デイサービスで打ち合わせた時には表情もなく、一言もしゃべらなかった方もお見受けしましたが、畑に来ると突然表情が豊かになって。「戦時中はこれを食べた」とか「この雑草の名前は何々だ」と、ものすごくしゃべり出したんですよ。準備した車いすも必要なかったです。皆さんがそうやって元気になる姿を見た時には、この活動をしていて良かったなと心から思いました。

北鬼江 あと去年の夏から近所の保育園の園児を招待して、野菜の収穫体験をしてもらう取り組みも始めました。都会の保育園ですから庭もなくて、畑を作ったりできなかったみたいで、園児たちはもちろん、先生方にもすごく喜んでもらえました。ぜひ来年も来たいと言ってもらえて。毎年4回やっている定期のイベント以外にも、こういう地域の方に楽しい場を提供するようなイベントを、これからはどんどん増やしていかないといけないなと強く感じました。

参加する・しないは、当人に任せるのが『有機クラブ』流

皆さんで落ち葉を集めている様子。収集後に落ち葉の中に混ざる小石を取り除かなければいけないなど、思った以上に大変な作業です。
落ち葉を木の囲いの中へ入れて踏み固めた後は、落ち葉を混ぜ合わせて空気を入れる「切り返し」を何度も繰り返し、腐葉土を作っていきます。
集めた葉は、約1年後には形が崩れ、真っ黒でふかふかな堆肥に!

――現在『有機クラブ』にはどれくらいの人が所属しているのでしょう?

北鬼江 今クラブに所属しているのは40名ほど。皆さん、花と野菜など自然が好きな人たちです。毎週土曜日に定期活動をしているのですが、普段顔を出すのは15名、16名ほど。イベント時になると、普段より増え、20から30人の人が参加しています。

――当日参加する・しないは自由、といった感じでしょうか?

北鬼江 それはもう完全に皆さんの自由です。活動に来ないから電話をするなんてことは一切しません。メンバーの中には、仕事を退職してゆっくりしている人も多いんですね。それなのにまた厳密に管理されるなんて嫌じゃないですか。私も管理したくありませんし。ですからメンバーには、肩の力を抜いて、軽い気持ちで参加してほしいと考えています。よくこういう活動だと、徐々に活動に来なくなって、そのまま自然といなくなる人もいますが、それも自由。私はいいと考えています。

磯部 普段の活動には来ないでイベントの時だけ来てくれるなんて人もけっこういますよ。そういう人もいていいんじゃないかな。

北鬼江 いろいろな考え方があると思いますが、私は今のような流動的な組織でいいと考えています。毎回、「これだけの作業は必ずやろう」とノルマのようなことを決めている団体もあると思いますが、私たちのところはそうした決めごとはなし。当人の良識に任せて、好きなように参加してもらえればいいと思っています。

――ゆるやかにつながる感じで参加しやすそうですね。もしこれを読んでいる人が「次から参加したい」と思ったら可能でしょうか?

北鬼江 もちろんです。活動日(毎週土曜日の午前)に中目黒公園に来ていただければ、どなたでも歓迎しますよ 。ただし、作業に参加したいという方は、万が一ケガなどをしてしまうと大変なので、年に300円の「ボランティア保険」を含む会費1000円を払っていただきます。

資金面の苦労は、“面白い苦労”!?

子どもたちが楽しそうにイベントに参加してくれることが、『有機クラブ』の皆さんの一番の活力になるとか!
廃材などを使い、修復しながら使っている落ち葉を入れるための木枠。
みどりの活動に取り組む団体を支援する東急電鉄の『みど*リンク』アクション。そこに応募することで支援されたブロワー。これも皆さんの工夫のひとつ。

――活動をしていて楽しいと思うことは?

岩井 ぼくの場合は、草や花に目が行くようになったことですね。今までは道を歩いていて雑草を見たとしても何も感じませんでした。ところが『有機クラブ』の活動を始めてから道で花を見かけたりすると、「あー花が咲いているな」と自然と草花に目が行くようなりました。以前よりも自分の視野が広がったような感じがしますね。

磯部 皆さん活動に参加すると植物にどんどん興味を持つようになります。作業をしていると「これは何の花だ?」と、ふと疑問を持つことが増える。そんな時もメンバーには草花に詳しい人が多いですから、すぐに花の名前を教えてもらえる。あと、「あ、こんな雑草が生えてきた。ちょっと土が良くなってきたのかな」と土にまで意識が行くようになります。

北鬼江 私はやっぱり、子どもたちがイベントで喜んでくれることが一番うれしいですね。野菜が嫌いな子どもでも、自分で取った野菜は食べるんです。隣の子どもが食べると、自分も負けまいと食べる。それを見てお母さんが泣いて喜ぶなんてことも。そういう地域の子どもたちの「食育」に貢献できることが、一番やりがいを感じるところですね。

――逆に大変だなと思うことは?  特に資金面で苦労することはありますか?

北鬼江 それはもう苦労ばかり(笑)。

磯部 でも資金面の苦労というのは、“面白い苦労”だからいいんです。

――“面白い苦労”?

磯部 例えば、目黒区もわれわれがお金を持っていないことを知っているのですが、そこは、あうんの呼吸で、どこかの現場で廃材が出たら、その情報をくれたりするんですね。あそこの現場で丸太が余るよとか板が余るよとか、そういうものでいろいろ工面するのって楽しいじゃないですか。

岩井 ぼくは落ち葉堆肥を担当しているので、本当のことを言うと、落ち葉を入れておくしっかりした木の枠を作りたいんですよ。でもお金が掛かるので、なかなかできない。

磯部 でもね、お金がふんだんにあってすぐに作れてしまうより、自分たちで工夫する方が楽しいんです。例えば、お祭りの時に、私が焼き芋屋をして、北鬼江さんが焼きそば屋さんになって資金を稼ぐとか。

岩井 よくやるのが、種から育てた花を売って稼ぐことですね。これも花が育ったり育たなかったりで、苦労することも多いのですが(笑)。

磯部 まちづくり活動の資金をどうしようかと悩んでいる人には、ぜひ「資金づくりも楽しもう」と言いたいですね。もちろん成功することもあれば、失敗することもあります。でも、あの時はあれで失敗したな、じゃ次は失敗しないように工夫しようとか。試行錯誤を繰り返すのも、やっぱり楽しいことですよ。

北鬼江 変な言い方ですが、私は、「たかがボランティア」という考えをどこかで持っておくことが楽しむコツだと思います。たかがボランティアなのだから肩肘張らないで、できることをやればいい。そういう姿勢で取り組むことで、資金づくりだって楽しめるようになると思います。

地域の人と気軽に交流できるミニイベントを増やしたい

「地域の人たちが楽しめる場」をこれから増やしたいという『有機クラブ』。今後は参加する方も気軽に手を挙げられるような、カジュアルなイベントが増えていきそうです。

――最後に、今後の展望を教えていただけますか?

北鬼江 先ほども少しお話しましたが、地域の皆さんへの還元ということで、もっとイベントを増やしていければと思っています。

磯部 特に増やしたいのは、ミニイベントのようなことですね。例えば、コンニャク芋ができたら、イベントの1週間ほど前に張り紙などで知らせて、10人ほどの参加者と一緒にコンニャクを作る小さなイベントをするとか。あとジャムづくりに皆でチャレンジしてみるとか。

――定期の大きなイベントではなくて、もっと手軽にできる小さなイベントをどんどん増やしたいと?

磯部 そういうことです。ただ、人手との兼ね合いがあるから、増やすにも限度はあるとは思いますが。

――その「人手」を増やすためにいろいろ活動するということはないですか?

北鬼江 今、「花みどり人(はなみどりすと)講座」を終えた人が毎年入ってくるんですが、結局は今ぐらいの人数に落ち着いています。それを積極的に増やすということはあまり考えていません。

岩井 野菜づくりも、肥料づくりもそうですが、参加してくれる人には、各々に分担してもらう作業を考えないといけないんですね。ただ、そう毎回仕事があるわけではありません。農家の仕事もそうだと思いますが、例えば、忙しい時期はたくさん作業がありますが、忙しくない時はほとんど作業がなかったりするわけです。そういう時には、はて何をしてもらおうかと、指示するときに逆に困ってしまいます。ですから、人数は今ぐらいの規模でちょうどいいのかなと。

北鬼江 あまり手を広げてお互いの負担になるのも困りますから、まずは今の規模で、皆さんが楽しめることをしていけばいい。その中でできるだけ小さなイベントを増やして、地域の人との交流を増やしていく。この姿勢を基本に据えて、これからも楽しんでいければと思っています 。

更新:2016年3月28日 取材:2016年2月20日

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