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東急電鉄

土のエネルギーを引き出す農 加藤之弘さん・加藤恵子さん

地産地消にまつわる人々 VOL.12

みずみずしい野菜や果物を作り続けている人たちがいて、その恵みを私たちのもとへと届けてくれる人たちがいる――。東急沿線で地産地消に取り組む、さまざまな人たちを紹介します。

仕掛け人
加藤 之弘かとう ゆきひろさん
加藤 恵子かとう けいこさん

江戸時代から続く老舗農家三代目の之弘さんと恵子さん。これからの農家は作っているだけではダメだと、近隣の農家仲間と共に学校給食に野菜を納品したり、市内各所のマルシェ出店、食育イベントへの協力など多岐にわたった活動を行っています。妻の恵子さんも子育てがひと段落したことをきっかけにジュニア野菜ソムリエの資格を取得。野菜の味を追求する之弘さんと野菜ソムリエの恵子さんが二人三脚で地域の農業を盛り上げます。

加藤農園
  • 横浜市営地下鉄 仲町台

農園がある横浜市都筑区の折本農業専用地区は、港北ニュータウンのすぐ隣。住宅地のすぐそばに、横浜とは思えない農園風景が広がります。年間50種類ほどの野菜を育てる加藤さんの日に焼けた顔は農家の証し。できるだけ農薬を使わず、土のエネルギーを引き出すことに力を注ぎます。

子どもたちと一緒に学ぶ地産地消の大切さ

これからの農家は野菜を作るだけでなく、消費者とのいい関係を築くことが大事、と加藤之弘さん・恵子さんご夫妻。
丘の向こうは高層ビルが立ち並ぶ港北ニュータウン。消費者との距離が近いという、地産地消に最適な条件がそろっています。
小学校の社会の教科書にも紹介されている加藤さん。小学生のみならず、農林水産省主催の食育活動モデル推進事業で大学生対象の農業体験受け入れなども行っています。

――地産地消の意識は、農業を始められた時からあったのでしょうか?

之弘
農家の長男に生まれ、いつかは農業を継ぐんだろうという思いはあったのですが、すぐには継がずに不動産会社で4年ほど働いてから戻ってきました。就農した当時は地産地消という言葉もなかった頃で、それほど意識しているようなこともありませんでしたね。意識するようになったのは平成17年頃から。最初は学校給食です。農家仲間が青葉区の学校給食を手伝うことになったということを聞き、自分たちも取り組んでみようかという話になりました。それで一番近い折本小学校に話を持って行ったら、ぜひにということになりました。学校給食を一緒にやっていたメンバーで、その後、都筑ファームという生産者グループをつくり直売所も始めました。横浜市は、全国でも一番直売所の数が多い所で、農園のすぐそばにも港北ニュータウンがある。お客様が周りにいて直売所へのニーズがあることも感じていました。

――地産地消の取り組みについては、具体的にどのようなものがありますか?

之弘
都筑区の都筑野菜朝市や地元での直売、横浜市のみなとみらい農家朝市などの直売市にも参加しています。都筑区・港北区・青葉区の小学校4校には、都筑ファームとして野菜を提供しています。また横浜市が毎年開催している、地産地消のネットワークを広げる取り組みである「はまふぅどコンシェルジュ講座」では、野菜の生産現場視察の受け入れを依頼され、案内役を務めて10年になります。

――小学校には講師として呼ばれることがあると聞きました。

之弘
年に一度あるPTAの給食試食会の時に、食材を納入している農家ということで地場の野菜について話をする機会を頂いています。さらに子どもたちへの地産地消教育の一環として、学校が借りている畑で子どもたちが育てる小松菜の指導もしています。
やはり地産地消と切り離せないのが、子どもたちへの「食」の教育です。自分が子どもの頃はクラスの半数が農家でしたが、今では農家は1人いるかいないか。子どもたちに農業に対する関心を持ってもらい、いい食材を見極められる目を養ってほしいと思っています。

――一緒に育てながら「食」の大切さと「地産地消」について学ぶのですね。

之弘
そうですね。教えたわけでもないのに、「堆肥だけで作った小松菜と化学肥料を使った小松菜、堆肥と化学肥料を使った小松菜の3種類を作ってみたらどうなる?」と農家も驚くようなことを子どもたちの方から言いだして、実際に作ってみたから食べ比べてほしい、と頼まれたこともありました。最近の子どもは土いじりが苦手ということを聞きますが、そんなことはなくて、本当に一生懸命やります。

自分たちで作った堆肥で土のエネルギーを引き出す

横浜市を代表する野菜といえば、収穫量が全国トップの小松菜。加藤農園でも一年を通じて生産しています。
歩いてみればふかふかしているのが、すぐにわかる、と加藤さん。農薬の使用を減らすために、雑草も除草剤を使わず小まめに手で抜いています。

――大変な手間をかけ、ご自分たちで堆肥を作っていますが、堆肥へのこだわりがあるのですか?

之弘
堆肥を使った畑と化学肥料を使った畑では、まず歩いた時のふかふか感が違います。当然、野菜の根の張り方も違ってくるし、それが野菜への味にも出ます。
父親の代には近所の農家と堆肥作りをしていましたが、日本が高度成長期になって化学肥料が一気に広まりました。そんな中でも有機を使うべきだという思いが父にはあったようで、それを受け継いでいる部分もあります。昔はこの辺りにも養鶏生産者と養豚生産者がいたので堆肥には家畜ふんと稲わらを使っていました。それが田んぼも徐々に無くなって古畳を使うようになり、今度は畳に防虫剤が使われているので良くないということになって。今は植木の剪定(せんてい)枝や横浜市の生ゴミコンポスト、三ツ沢にある馬術練習場の馬ふんをブレンドしたものを使っています。

――堆肥で作った畑のエネルギーがそのまま野菜のおいしさになるのですね。

之弘
うちの野菜のおいしさの秘密はこの堆肥による土作り。特にトウモロコシは、生で食べても果物並みに甘いと人気なんです。

親子三代で取り組む農業

長男の竜平さんが就農し、どうやって次世代へとつないでいくかもこれからの農家は考えなければいけないと加藤さん。
IKEAなどの商業施設や地域の小学校などで旬の野菜を販売することも。
地域の農家を代表する立場となることが多い之弘さんと、食に携わる女性たちとのネットワークを広げている恵子さん。新しい展開への期待が高まります。

――息子さんも就農され親子三代になりました。どのような農家になってほしいですか?

之弘
息子は農学部を卒業しているので、まったくの農業の素人というわけでもありません。でも今はまだ現場で試行錯誤をするのも必要だろうと思い、あえて何も教えないこともありますし、失敗した時には「どうして失敗したと思う」という話をする時もあります。うちの父親は寡黙な人で、自分からは何も教えてくれない人でしたけど。息子には厳しい父親だと言われますが、人に食べてもらうものだから、やっぱり妥協できないことはあります。
恵子
野菜をこつこつ作って市場におさめるのも大切ですけれど、農業を活性化し、次世代に繋げていくには、いろんな人と関わって交流を持てる場を作っていってもらいたい。地産地消の仲間づくりをしていって欲しいです。
之弘
そうですね。限られた農業人口なので、横のつながりは大切。また食を提供するだけでなく、消費者との架け橋になり、農業を理解してもらえる良い関係を築いていくのが生産者の使命だと思います。

――息子さんの就農に続き、奥様も野菜ソムリエの資格を取られましたが。

恵子
直売や朝市に参加すると、お客様にいろいろと聞かれるんですね。それで、自分が家で作っている食べ方以外にどんなものがあるんだろうと思い、料理教室に通い始めました。その時に知り合った野菜ソムリエの方に触発され、去年、子育ても一区切りついたので、自分もやってみようって。ジュニア野菜ソムリエと食農教育マイスターの資格を取りました。はまふぅどコンシェルジュ講座もこれまでは受け入れ側だったのが、昨年は野菜ソムリエとして参加して勉強しています。

――お話をうかがっていると、直売は野菜を買うだけではなく、野菜のことをいろいろ教えてもらえる場なんだなと感じます。

之弘
安心・安全ということは、今や当たり前。食べておいしい野菜でなければなりません。そのためにはやっぱり元に戻って土作りが大切なんです。一方、これからの農家はただ作っていればいいのではなく、そういった野菜についての情報を発信することも必要だと思っています。

加藤農園さんの野菜を私たちが料理しています。

齊藤良治さん

加藤さんとの最初の出会いは、横浜市が開催している「はまふぅどコンシェルジュ講座」。初めて加藤さんが作った野菜を食べた時には、野菜のえぐみまでおいしいのに驚かされました。えぐみだけだと不快に感じてしまいますが、何かがバランスよく入っていて、それがおいしく感じさせているんじゃないかと。

おいしい野菜を作る方はたくさんいらっしゃるのですが、特に加藤さんの野菜は苦味もおいしい。堆肥も自分で作り、こだわった土作りをしているということで、そういった努力がきっと味にも出ているんだと思います。

一見怖そうに見える加藤さんですが、いつもダジャレを言ってばかりで、実は笑顔がとてもすてきな農家さん。奥様と一緒の時は、漫才を見ているよう。でもそういった遊び心も大事ですよね。そんな優しい人柄の農家さんが作る野菜なんだと思いながら、いつも調理しています。

野菜レストランさいとう
オーナーシェフ 齊藤 良治さん

直売所に出掛けて野菜がたくさん並んでいるのを見ると、それだけでうれしくなるという野菜好きの齊藤さん。料理だけでなく、現在は自ら保土ヶ谷区、神奈川区、港北区、都筑区の農家さんを回って採れたての野菜を仕入れ、月に2回、店頭で「野菜レストランさいとうマルシェ」を開催。野菜レストランを名乗っているので、おいしい野菜を皆さんに知っていただくことが自分の使命、だと話します。

更新:2017年2月2日 取材:2016年10月~12月

東急沿線 地産地消マップ
特集「地元を食べる 地元で食べる」で紹介してきた東急沿線の地産地消スポットをGoogleマップでチェック! 各ポイントをクリックすると、写真や詳細情報を見ることができます。

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