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東急電鉄

“共感”が連鎖していく――不動産オーナー目線で考えるまちづくり

リノベーションまちづくり@東急池上線 VOL.2

全国的に大きな地域課題となっている、空き家や空きビルの増加。その課題に対し、東急電鉄がリノベーションを通じたまちづくりに取り組み始めました。そのスタートとして、株式会社リノベリングの協力のもと、池上周辺エリアで2月に3回にわたるシンポジウムが、3月には実践の場となる「リノベーションスクール@東急池上線」が開催されます。シンポジウム2回目となる今回は、不動産をさまざまな形で活用している不動産オーナーを招き、大家の目線からまちづくりを考えました。

これからの不動産経営のキーワードとなるのは“共感”

日本のリノベーションの第一人者といわれる、ブルースタジオの大島さん。NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも、その仕事ぶりが紹介されました。
大島さんは、「これからの不動産経営には、“あなたでなければ、ここでなければ、いまでなければ”紡げないオンリーワンの“物語”が必要だ」と語ります。

まず講演を行ったのは、ブルースタジオの大島芳彦さん。大島さんは2000年から遊休不動産の再生・活性化をテーマとしたリノベーション事業に携わる建築家です。その豊富な経験の中で感じてきたことを、「地域の大家はまちづくりの主役!」というテーマで、分かりやすく解説しました。

講演の核となったのが“共感”というキーワード。人口が右肩下がりとなっている今、不動産オーナーやまちづくりにも「経営する」という感覚が求められると言います。そこで必要となるのが「共感を連鎖させる力」。例えば賃貸住宅において、入居者がただの消費者であれば、退去するとゼロから新しい入居者を探し直す必要があります。ところが入居者が、不動産オーナーが指し示すビジョン(理想)の共感者であれば、出て行くときにそのビジョンに共感する仲間を連れてきてくれることも。こうした共感する人をいかに集めていくか。つまり、これからの不動産オーナーやまちづくりには、明確なビジョンが求められるそうです。
さらに、「今の時代の魅力ある不動産や街とは、主体性を持つ当事者による、共感によってつながれた、持続性のある共同体である」という言葉には、多くの参加者が心を動かされていました。

実際に不動産経営をしている2人のオーナーの経験談を聞く

みんなで使える共通の仕組みづくりに注力している茨田さんと、自身を地主系大家ならぬ“土着系大家”と称して周囲を巻き込みながら活動する石井さん。
1階のFAB工房スペースを入居者に限らず、街の共有部として開放する「カマタ_ブリッヂ」。写真は、オープン日の様子。
「PASAR SHINJO」で開催されたマルシェの様子。川崎産の野菜やコーヒー、パン、アクセサリーなどが販売され、多くの人でにぎわいます。

続いて、実際に不動産をさまざまな形で活用している不動産オーナー当事者の講演がありました。

■街が持つ特徴を生かした場づくり
茨田禎之さん(有限会社ユウ)

大田区・蒲田エリアで、代々、大家業を営む茨田さん。リノベーションを活用した「U&Me komichi(うめこみち)」「カマタ_クーチ」「カマタ_ブリッヂ」などのプロジェクトを通して、建築家やクリエイターを地域に巻き込む仕組みを次々に生み出してきました。
入居するテナントを決めてからリノベーションした「カマタ_クーチ」。ここは、木造密集地域の空き地や路地をパブリックな空間として開放し、街のにぎわいを創出しています。工房併設型のシェアオフィスである「カマタ_ブリッヂ」では、これまで街と関わりがなかった家具デザイナーなどがここをハブ(拠点)に、町工場の職人とつながりを持ち始めるなど、さまざまな効果が出てきているそうです。「これらの物件はバラバラにありますが、全体として共通した価値観を持たせ、蒲田エリアを特徴づけるものにしたい」と語る茨田さん。蒲田で活動する人たちをつなぐ「@カマタ」というネットワークづくりにも力を入れています。静かな口調の中にも街への熱い思いを感じさせる講演に、会場中がぐっと引き込まれていました。

■人と人をつなぎ、エリアの価値を上げていく
石井秀和さん(株式会社南荘石井事務所)

生まれ育った川崎市・武蔵新城エリアで活動する石井さん。人口減少が進む中で、物件だけを改善しても意味がないと考え、物件単体ではなく、エリア全体の価値向上を目指す取り組みを進めています。そのひとつが、賃貸マンションの1階を改装した街の広場「PASAR SHINJO(パサール新城)」。ここには、地域のコミュニティカフェの「新城テラス」、地元の人が運営するパン教室、入居者が利用できるコミュニティスペースが設けられています。この場でマルシェやワークショップなどを行うことで、入居者と地域をつなぎ、街全体の魅力を上げていこうと取り組んでいます。
また一方、街の人をつなぐツールとして、地域住民同士の交流を生むSNS公開グループ「ふらっと武蔵新城」の立ち上げを行いました。その取り組みは他エリアへの広がりも見せています。石井さんは最後に、「大家ほどいろんなことができる属性はないと思います。今日会場にいる皆さんも一緒になって、“住みたい街”をつくっていきましょう」とエールを送り、盛大な拍手を受けていました。

それぞれに“共感の連鎖のさせ方の違い”があっていい

茨田さんはスーツ、その一方で石井さんはつなぎとTシャツという服装も対照的な二人。背負っているものは同じでも、やり方は自分らしいスタイルでいいと感じさせられます。
セッションは、「予定調和なんてない。何事もまずチャレンジしてみることが大事」という、大島さんの不動産オーナーを後押しするような言葉で締めくくられました。

講演後は、登壇した3人によるセッションが行われました。やり取りの中で印象深かったのは、大島さんが、不動産オーナーである茨田さんと石井さんそれぞれの立ち位置の違いを指摘したことです。

茨田さんは黒子に徹し、あまり表に出てきません。若いクリエイターたちに活躍の場を与え、ものづくりの街である蒲田とつなげたいというビジョンを持って取り組んでいます。一方で、石井さんは自身でイベントの中心に立って活動を続けていくうちに、今度は共感する人間が周りから集まってきています。この2人の“共感の連鎖のさせ方の違い”が面白いと大島さんは指摘し、会場からも強い興味を引いていました。

このほか、「大家の枠を超えてイベンターのようになっているところがありますが、こういった活動の次に大家としての結果がついて来ると思います」(石井さん)や、「地域の問題を直接解こうとするのではなく、別の問題を抱えている人たちを結び付け、不動産を通じて解決に取り組んでいくのが良いと思います」(茨田さん)など、当事者ならではのコメントが次々と。3月に控える「リノベーションスクール@東急池上線」に向け、参加者の士気を大いに上げるシンポジウムとなりました。

最後となる3回目のシンポジウムは2月23日、池上線沿線の持つポテンシャルについての講演会が予定されています。

更新:2017年2月16日 取材:2017年2月1日

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