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東急電鉄

桜の風景をささえる人たち(2)

東急沿線で桜の保全活動を行う3団体

冬は葉を落とした寂しい姿を気に掛ける人もいませんが、春になれば花を咲かせて街の景色を彩る「桜」。毎年の桜の風景を末長く楽しめるようにと、日頃から活動している人たちがいます。東急沿線の桜スポットで、桜を中心とした地域活動を続ける3つの団体に桜への思いを伺いました。

二子玉川に桜の風景を残そうとクラウドファンディングに挑戦

土手の上から多摩川を見下ろして咲く桜並木。土手のすぐ横の道は車の交通量も多いですが、日当たりも良く、1本1本が太く、枝ぶりも見事です。
和田博幸氏と巡る桜の診断ツアー。「花の咲いていない桜の木を、こんなにじっくりと見ることはなかなかない」と参加者たち。
切り落とされた大量の枝を集めるのも大仕事。春にまた美しい姿を見せてくれることを願いながら枝を集めます。

NPO法人 玉川にエコタウンをつくる会

設立:2010年 会員:30名
活動エリア:瀬田・玉川・上野毛周辺

二子玉川の土手には以前から桜の木が植えられていましたが、枝が重そうに垂れ下がり、幹が傷んでいる木もたくさんありました。桜が満開になる春の風景を失いたくない、という思いから、クラウドファンディングで伸びすぎた枝を剪定する資金集めにチャレンジしたのが、「NPO法人 玉川にエコタウンをつくる会」です。

きっかけは、2014年3月に桜の樹木医として知られる和田博幸氏を講師に招いて、桜について学んだイベント。「ソメイヨシノの寿命は一般的に60年」と聞いたことで、多摩川の土手の桜はどうなんだろうという疑問が湧きます。そこで再び和田氏を招いて、桜の木を実際に見ながら歩く勉強会を開催。伸び放題だった桜の様子を目の当たりにし、手入れしてもらおうと、土手を管理する国土交通省へ。しかし予算がないからと断られ、それなら自分たちでやるしかないと、剪定の許可をもらって専門業者に見積もりを依頼しました。ところが、伸びた枝の剪定は簡単ではなく、剪定以外にも作業中のガードマンの手配や切った大量の枝の運搬など、費用は膨らむばかり。「地域を回って寄付をお願いしよう」などさまざまな意見が出されたものの、時間と人手の面から断念。最後にたどり着いたのが、資金調達の方法として当時注目され始めていた“クラウドファンディング”でした。

2015年、会の代表であるトシコ・スチュワートさんを中心に50日間で80万円を集めるクラウドファンディングに挑戦。毎日、知人にメールを送り、ブログを更新するものの、初めはなかなか集まらなかったそうです。期限までに目標額に達しなければ、資金を受け取ることはできません。残り1週間となってもまだ目標額には遠く、クラウドファンディングの運営会社に励まされながらも、ドキドキの毎日だったそうです。目標額に達したのは本当にギリギリのタイミング。賛同者は二子玉川近隣の個人や企業だけでなく、今までここの桜を見たことがない日本各地の人々に加えて、海外からの申し出もあったとか。

こうして資金を得て、まず4月に桜の開花を観察。続いて10月にはクラウドファンディングの賛同者も参加しての桜の診断ツアーを行いました。樹木医の和田氏とともに30本の桜を観察し、1本ごとに診察カルテを作り、最終的に20本の桜を手入れすることにしました。 そして2017年1月に剪定作業が実現。作業は4日間にわたって行われ、会のメンバーや賛同者、ボランティア含め延べ22名が参加しました。診察カルテをもとに職人たちが枝を剪定し、切り口に保護剤を塗って病気を予防します。大量の枝は、使えるものは燃料用のまきとして希望者へ。残りは病気のものが除かれ、粉砕、消毒して肥料に再加工されました。「なんでも行政任せにしてしまいがちだけど、自分たちでできるものは自分たちの手でやった方が愛着が湧きます。少しでも多くの人が、地域の自然に目を向けていただけたらうれしい」とスチュワートさんは話します。

千年先に思いをはせる多摩川土手の桜並木

まだ花の少ないころに、一足早く咲くカワヅザクラはここだけ春が来たようです。等々力周辺は野鳥も多く、メジロなども桜の花に集まってきます。
土手の斜面に植えられたツゲは木も硬く、伸びすぎた枝を刈るのは簡単ではありません。
ヤエベニシダレのそばに建てられた、植樹記念の基金協賛者碑の前で。基金協賛者碑には、全国から植樹のために募金をした405名の名前が刻まれています。

多摩川等々力土手の桜を愛する会

設立:2000年 会員:20名
活動エリア:等々力緑地そばの等々力信号横から丸子橋方向の右岸約600m

多摩川に今ほど橋がなく、渡し船が数多く残っていたころ、菅(すげ)の渡し場があった稲田堤の土手は、関東で3本の指に入る桜の名所として知られていたそうです。その当時の面影を記憶にとどめている人たちが、もう一度多摩川の土手に桜並木を復活させたいと「多摩川桜の会」をつくって募金活動を行い、2000年2月20日に47本の桜を植樹しました。しかし、その後の維持・管理をする人がいなかったため、地域活動に熱心な菅田木一さんが会長となり、地元の人たちを集めて桜の管理に乗り出したのが「多摩川等々力土手の桜を愛する会」の始まりです。

苗木を植えて根がつくまでの3年間は、近くに水道がないので多摩川から水をくんでリヤカーで運び、雑草を刈って肥料をまいたりと、夏の炎天下の管理にとても苦労したそうです。今は木も大きくなって枯れる心配も少なくなり、管理もずいぶん楽になりました。さらに5年ほど前からは、桜並木が地域の財産として国や川崎市にも認められ、年に4回の草刈りを行ってくれるように。「草刈機の練習をしたのに腕が鈍っちゃう」と明るく話すのは、会の中心メンバーである鈴木眞知子さん。

会員のこだわりで、ここにはカワヅ、ウスズミサクラ、ショウカワ、オオシマ、ソメイヨシノ、ヤエベニシダレ、ジンダイアケボノ、センダイヤ、ベニガサ、ウコン、フクロクジュと、花びらの色や形がさまざまな11種類の桜が植えられています。2月の下旬から4月下旬にかけて、時期を少しずつずらしてきれいな花を咲かせます。お花見に訪れる人もずいぶん多くなったそうで、地道な活動が実を結んだ結果、と話してくれました。

会の活動は毎月第4土曜日。冬の時期にはゴミ拾いが中心になり、夏は、土手の転落防止用に植えられたツゲが生い茂るため、その刈り込みが中心です。「木が小さかったころは大変だったけど、17年も続けてこられたのはやっぱり地元愛と、無理に活動を強制しないから」。月に一度の活動には、その時に出てこられる人が参加すればいい。長く続けていれば、少しずつ認められて手を差し伸べてもらえることもある、と語ります。

近年、リンゴの木の剪定技術を使って桜の木を管理することで、寿命を伸ばしている例があると聞き、剪定についても勉強しているという鈴木さん。そもそもジンダイアケボノなどは千年も生きるそうですが、「私たちはそんなには生きられないから、空の上からお花見しているわ」と笑います。現在は、最年少(60代)の南谷幸三さんが中心となって活動が続けられており、ソメイヨシノが満開になるころに、会のみんなでお花見をすることも、活動には欠かせない楽しみのひとつになっています。

桜並木を活用して地元愛を深めるコミュニティづくり

水路があった場所を暗きょにして桜を植えたため、限られた空間にしか根が張れず、木の成長に時間がかかったそう。
手作りされたLEDライトによってライトアップされた「ねがた桜みち」。会では桜みち全体をイルミネーションのようにできないかと計画中。
春に毎年楽しませてくれる桜への感謝を込めて、秋には落ち葉の清掃活動。清掃の後は豚汁の交流会が待っています。

ねがた桜みちの会

設立:2012年 会員:43名
活動エリア:仲池上周辺

桜並木の整備された遊歩道を「桜みち」と名付け、地域のコミュニティづくりをしているのが「ねがた桜みちの会」です。毎年、4月の第1日曜に開催する桜まつりに加えて、子どものすもう大会や神社の例大祭でのおみこし、日頃の公園清掃活動など、桜並木を地域交流の拠点として位置づけ活動しています。この桜は、1993年から97年に大田区が道を整備する際に植えたもの。それが15年ほどたち、見応えある花が付くようになってきたので、桜の並木を街の活性化に役立てようということになったのが活動の始まりです。

会の活動場所である大田区・上池上自治会の仲池地区は、かつては小さな町工場が軒を連ねる工業地帯。しかし次第に工場に替わってマンションが立ち並び、小学生のいるファミリー層が数多く移り住むようになりました。そこに地元を愛する有志が「桜まつり」を開催する実行委員会を結成し、その後も「ねがた桜みちの会」として活動を継続。さらにPTAを中心にした“おやじの会”と称する父親たちのグループや上池上自治会も加わって、現在に至っています。会の名前にある「ねがた」はこの地域の古い呼び名です。

会の一番大きな活動となるのは春の「ねがた桜まつり」。手作りのLEDライトで遊歩道をライトアップし、最終日にはメインイベントとして地元小学生たちが元気いっぱいに「桜みち」を走り抜けるランニング大会が行われます。スタート地点の仲池上二丁目第二児童公園には、地元商店街による模擬店も出店し、桜まつりを盛り上げます。

桜の時季以外では、夏のバーベキューと秋の清掃活動も会の大きなイベント。清掃活動の後には、地域の大人と子どもが一緒になって豚汁を食べながらの交流会も開催されます。大田区には「ふれあいパーク活動」という、地域の人々が公園を地域の庭として自主管理する制度があります。会では、仲池上一丁目ふれあい児童公園において活動する団体としてこの制度に登録し、定期的な清掃活動を行うことで、地域交流の場として公園を利用しています。

「この地域はかつて相撲の盛んな地域でした」と、メンバーの海老澤さん。海老澤さんが子どものころには、夏休みになると毎日夜に相撲の練習があったそうです。仲池上二丁目第二児童公園は「すもう公園」と呼ばれ、公園内には今も土俵が残されています。その土俵を使って行われる子安八幡神社奉納すもう大会は、子どもたちにとっても、大人たちにとっても一大イベント。夕方から始まる取り組みは、歓声に包まれながら夜遅くまで続きます。

今後の会の目標は、通りに「ねがた桜みち」の標識を立てること。成長した桜をきっかけに、さまざまなイベントを通じて住民の地元への愛を深める活動ぶりが認められれば、通りに標識が立つのもそう遠いことではないかもしれません。

東急沿線 桜マップ

東急沿線にある桜スポットをGoogleマップでチェック! 人のアイコンは、この特集で紹介した桜の保全活動を行っているスポットで、桜のアイコンは東急沿線にある桜のスポットを表しています。それぞれアイコンをクリックすると、活動風景や桜の写真、詳細ページへのリンクが表示されます。

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  • その他の桜スポット

更新:2017年3月24日 取材:2017年2月

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