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東急電鉄

お会式の文化をささえる人たち

池上線沿線で活躍する3人の思い

毎年10月11日から13日に池上本門寺で行われるお会式(おえしき)。全国から多くの人たちが集まり、にぎわいを見せています。お会式は、日蓮聖人の命日法要です。纏(まとい)を振り、うちわ太鼓や鉦(かね)をたたき、笛を吹き、お経を唱えながら練り歩く万燈行列は、江戸時代から続いているといわれています。
万燈行事は全国各地で行われるもので、本門寺を中心とする日蓮宗の各寺でも行われており、檀家の方々だけでなく、地域の人たちが講中(結社)という団体をつくってその行事を支え、受け継いでいます。

洗足池や池上の街の講中に所属し、地域のお会式を支えている3人の方に、お会式に対する思いなどを伺いました。

歴史あるお会式を残していくために

洗足池ボートハウスの2階で。石井さんと事務局の守屋さん。
自由が丘の立源寺から譲り受けた万燈の前で。(提供:石井さん)
若手が纏を振る様子を見守る石井さん。(撮影:木村雅章)

石井 昭夫PROFILE●いしいあきお

洗足池の自然や景観を守る公益社団法人洗足風致協会の副会長。洗足池商店街などから組織され、洗足池のお会式を取り仕切る御松庵結社の代表でもある。

ここ洗足池のほとりに先祖代々暮らしている石井昭夫さんは、長年、お会式と密接に関わってきました。
お会式とは、おみこしのようなお祭りではなく、10月13日の日蓮聖人の命日に合わせて行われる日蓮宗の法要です。
お会式には、万燈(まんどう)、纏、笛、鉦、うちわ太鼓が使われます。現在のような形でお会式ができるようになったのには、さまざまな人たちの協力があったから、と石井さんは言います。

「もともと私と私の兄とで提灯万燈(提灯を連ねて作った万燈)を作り、今は亡き御松庵の住職とともにほそぼそとお会式を行っていました。お会式をするのには人手もいるし、お金も掛かる。困っていたところ、商店街の小林前会長が名乗りを挙げて商店街としてもお会式に協力していただけることになりました。現在の万燈は、自由が丘の立源寺さんが譲ってくれたものなんです」

お会式・万燈行事は、全国各地で行われるもの。毎年数十万人が訪れる東京の池上本門寺周辺では、9月18日から11月12日まで、15の寺で行われています。洗足池の『御松庵妙福寺』もそのひとつで、ここで行われるお会式に参加する人たちは他の池上本門寺周辺の寺で行われるお会式にも参加します。それゆえに、困っているところがあったら助ける互助の精神が保たれているようです。

「他のお寺から万燈を運ぶのに、車で持ってくるんですが、3年前から道路の規制が厳しくなり、駐車するスペースにも困っています。最近は盆踊りをするにも、うるさいと苦情が来て、イヤホンをつけて踊るところもあるとか。情けないことです(笑)。洗足池のお会式は、洗足池商店街の人たちが全面的に協力してくれて成り立っています。特に『人』ですね」

お会式に際しての打ち合わせや練習は、午後7時頃から行われます。以前なら商店街の人は仕事の合間に参加することができましたが、2代目、3代目となると店を継がない人が増え、会社勤めで7時に間に合わず、練習に参加できる人が減ってきたのだとか。そんな中、いま石井さんが一番頭を抱えているのは、この歴史あるお会式を続けていくために、どうすればいいかということです。

「商店街の方々には、人的にも資金的にも全面的に協力をしていただいていますが、“魚忠”(洗足池の鮮魚店)の亀山さんには、本当に助けられています。現在は(別の街で)勤めてますが、それでも毎年可能な限り参加してくれています。歴史あるお会式が今後も続いていくためには、亀山さんのような若くて熱心な若い人たちが必要ですね」

洗足池の場合、法要が行われる御松庵と、実際に万燈行列を行う地元商店街の人たちの協力なくしては実現できないということです。洗足池のお会式を今後もずっと続けていくために、石井さんは若手の活躍に期待しています。

お会式と商店街がこれからもずっと続いてほしい

商店街とお会式が続いてほしいと亀山さん。
幼少の頃、お会式に参加した時の亀山さん。この時は、うちわ太鼓を受け持っていました。(提供:亀山さん)
気を入れ、凛々しく。(撮影:木村雅章)

亀山 陽平PROFILE●かめやまようへい

洗足池の鮮魚店・魚忠の次男。お会式には幼い頃から参加し、商店街の若手の代表的存在。現在は美容師として活躍している。

亀山陽平さんは、洗足池・魚忠の息子さんで、神奈川県で美容師として働いています。仕事が忙しい中、ほぼ毎年お会式に参加し、行進の際は纏を担当しています。

「お会式に参加したのは幼稚園の頃ですから、5歳からだと記憶しています。その頃は、小さな纏を見よう見まねで振って。見ているおばちゃんたちが『かわいい、かわいい』と言ってご祝儀をくれたんですよ。中学の頃、思春期でやらなかった年もあったかもしれませんが、それ以外は毎年参加していますね。纏を担当するようになったのは、かっこよく纏を振る師匠の影響。纏を振る時には『きれいに格好よく』を意識しています」

亀山さんが振る纏は重さ10キロほどだそう。本来であれば、何人かで交代しながら行進しますが、以前に比べて纏を振る人が少なくなっていたそうです。

「昔は、商店街のおじちゃんやおばちゃんの下でお会式に参加していたのですが、自分と同年代の人たちが参加してくれるので楽しいですね。美容室の仲間や、その友人に声を掛けて、ここ3、4年は参加してもらっています。それでも3、4人。纏を振るには練習も必要なので、お会式近くになると、皆で週1回は練習しています。洗足池には、笛を吹ける人がいないので、下丸子から手伝いで来ていただいています。本門寺へは御松庵を代表して行くので、手伝ってくれる方を呼んで行きます。人数を集めないと格好がつかないので(笑)」

おみこしでもなく、お祭りでもない“お会式”を、まず一度見に来てくださいと誘い、楽しめそうだったら参加してもらうのだそうです。洗足池のお会式にかかる時間は約1時間。街を一周した後は御松庵で簡単な夕食をいただき、しめやかに解散するそうです。

「おみこしの場合は、担ぎ屋さんが来たり、同じ地域のはんてんを着ていても、全然知らない人が集まっていることが多いんですよ。お会式は法要なので、人と人とのつながりで行われるもの。大々的に参加を告知するのではなく、知り合いの知り合いくらいがいいですね。子どもの頃からこの街に住んでいて、商店街の人たちに育ててもらいました。お店は少なくなってしまいましたが、これからも商店街のつながりは残していきたいし、商店街と一緒になってお会式を続けていきたいです」

商店街と切っても切れないお会式の関係。亀山さんは、今後の洗足池のお会式を支える重要な役割を担っています。

街づくりの仕事につながったお会式への参加

街おこしにも取り組む福田文明さん。
池上徳持若睦会の面々と。(提供:福田さん)
お会式では纏を振る。(撮影:木村雅章)

福田 文明PROFILE●ふくだふみあき

株式会社アイシテル代表。本門寺のお会式には20歳の頃から参加。池上地区商店会連合会などで街づくりにも関わる。

福田文明さんは、池上生まれ。現在はホームページ制作会社を経営しながら、池上周辺の街おこしも行っています。

「池上でのお会式は、20歳の頃から。地元のパン屋の息子だった先輩に誘われて参加することになりました。 本門寺でのお会式が有名ですが、実際お会式は、洗足池や鈴ヶ森など15カ所を回ります。当初は、一番規模の大きい本門寺だけ参加していましたが、長年お会式をやっている仲間から、周辺のお付き合いのある15の寺を回ることも本当のお会式の大切なことだと教えてもらいました」

また、社会人になってからもお会式への参加を続けていくのには、工夫することが必要だったと言います。

「参加した当初、現在のように自営業ではなく会社員をしながらでしたから、通常の練習時間とは別に自主的な集まりの時間を、夜の11時から深夜1時までと遅くしてやっていたんです。深夜に纏の練習をしたりして。当時は若かったので遅い時間でも大丈夫でしたが、そうやって自分たちが今の状況で参加できるように調整していくことも大事です。現在は、お会式に参加する若い人たちがどんどん減っているので、本門寺でスケボーをやっている若者に声を掛けて参加を呼び掛けたりもしたいと思っています。あとは地元の小学校のつながりで若い人を集めているのが現状です」

お会式で人を集める側になった福田さんですが、このお会式に関わったことで、地元商店街との関わりも深まっていったのだとか。

「私がお会式で所属しているのは『池上徳持若睦会』という会で、ここに73名います。池上エリアでこうした会が6つあります。その中に、商店街の役員をしている八百屋さんがいて、私が独立して会社をつくり、あいさつに行った際に、ホームページを作ってくれないかと依頼してくれました。お会式に参加し、商店街のつながりが深まっていって、街の仕事もできるようになりましたね」

昨年、池上の古民家カフェ蓮月で怪談のイベントを企画し、クラウドファンディングなども達成した福田さん。持ち前の企画力を生かし、お会式にもその“工夫する力”を発揮しています。

「万燈は、会によって、山車のように車(車輪)がついているものと、ついていないものがあって、私が所属する会ではついていないんです。街を練り歩く時に、慣れている人は『ここは電線が低いから気をつけよう』とわかっているのですが、慣れていないと電線に引っ掛かって、さらに、めったにないことですが、万燈が倒れて壊れてしまうこともあります。それで、修理をしなければいけないんですが、予算がないので自分たちで直す。今はまだ上の世代の人が直していますが、今後少しずつ覚えていかなければなりません。纏も、うちの会では、棒の部分は木で、上の部分はベニヤ板を貼り付けて作っています。教わったことは、SNSでグループをつくって共有しています。予算も安く済みますね」

万燈も纏も、壊れたら自分たちで直してしまうという頼もしい会に所属する福田さん。若さと知恵をもって、この伝統あるお会式を盛り上げています。自分が街づくりに参加するきっかけになったお会式が、今後も若い人たちでにぎわうようにと活動しています。

取材・文:コトノハ

池上線沿線の主な万燈行事

本行寺 池上駅 9月18日
池上本門寺 池上駅 10月12日
法蓮寺 旗の台駅 / 荏原町駅 10月16日
御松庵(妙福寺) 洗足池駅 10月17日
本光寺 久が原駅 10月19日
妙雲寺 池上駅 10月25日
林昌寺 洗足池駅 / 西馬込駅 10月27日
長勝寺 池上駅 10月28日
微妙庵 池上駅 11月1日
     

更新:2017年10月6日 取材:2017年9月

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