WISE Living Lab (3) 健康まちづくりセミナー~「食事」とまちづくり~
ヒト・コト・モノがつながる場
ヒト・コト・モノがつながる場
たまプラーザの美しが丘公園に隣接し、地域住民・行政・大学・企業などが連携してまちづくりを進めていくための場としてオープンした「WISE Living Lab(ワイズ リビング ラボ)」。横浜市と東急電鉄が推進する「次世代郊外まちづくり」の情報発信や活動の拠点としても期待されているWISE Living Labの“ヒト・コト・モノ”を、イベントレポートやインタビューでお伝えします。
WISE Living Labで10月4日、食事とまちづくりをテーマにしたセミナーが開催されました。「次世代郊外まちづくり」のプロジェクトでは、健康で生き生きと暮らせるまちの実現に向け、健康に関する連続セミナーを行っています。今回は「がん」「認知症」に続く第3弾。食事がテーマということで、いつもの共創スペースではなく「PEOPLEWISE cafe(ピープルワイズカフェ)」での開催となりました。
講師は弦弓まき子(つるゆみまきこ)さん。青葉区内のクリニックに勤める栄養士です。在宅医療に従事し、実際に高齢者と話をしたり、症状を見たりした実体験も交えながら、誰にでもできる食事のコツを紹介してくれました。
老化に伴って筋力や活動が低下することを「虚弱(フレイル)」といい、厚生労働省の調べによると、これが原因の介護は、90歳以上で実に43.6%にも上るそうです。転倒・骨折・認知症が原因の介護もまた、年齢とともに増えていきます。いわゆるメタボ対策として、40年くらい前から「野菜を摂りなさい」「肉を減らしなさい」「体重は増やし過ぎないように」などと言われてきましたが、その影響もあって、筋肉や骨量、骨強度に必要なたんぱく質が足りない食生活をしてきた高齢者が多いとのこと。それが、今の介護の原因にもつながっていると言うのです。
「訪問先でお話を聞くと、皆さん、必ずしも“長生き”を望んでいるわけではなく、自分のことは自分でできる一生でありたい、人の世話になりたくない、と願っているのです」。この言葉には、会場でも多くの人が共感していました。
早期発見が重要な「フレイル」。中でも、特に筋肉量や筋力、身体機能の低下を「サルコペニア」といい、これは加齢だけでなく、エネルギーやたんぱく質などの摂取不足や運動量の減少も原因になるそうです。
「65歳くらいから、もちろん30代、40代の人は今から、サルコペニア対策を意識し始め、75歳になる頃には習慣にしてほしい。75歳でいきなり変えるのは難しいですから」と弦弓さん。
食事のポイントとして「体重を適正に維持する」「十分なたんぱく質を3食に分けて食べる」「免疫機能と吸収力が大切」の3つについて、それぞれ具体策が紹介されました。特にたんぱく質は、朝食でも必須だそうです。「起床から1~2時間以内に、目を覚ますだけでなく体も覚ますつもりで食事をとってみてください」と弦弓さん。チーズや納豆を添えたり、なるほど、調理しなくてもいいものなら始めやすいですね。
食事のコツを学んだ後は、それを基に健康に役立つピープルワイズカフェの新しいメニューを作ってみよう、というワークショップです。5~6人のグループになり、それぞれに進行役となる栄養士が一人ずつついて、「トースト」「スープ」「サラダ」の3つのメニューを考えていきます。
各グループからは、じゃこチーズトーストや卵サンド、ツナサンド、季節野菜のポタージュスープ、水切りヨーグルトを載せた野菜スープ、豆腐サラダ、豚しゃぶや蒸し鶏のサラダなどのアイデアが。たんぱく質の摂取を考慮したメニューや、女性ならではのちょっと欲張りなメニューも出てきました。ピープルワイズカフェ店長の矢口晃子さんも「私たちが思いつかなかったアイデアをたくさんもらった」と驚くほど。
またグループでの話し合いでは、一人暮らしの高齢の女性が簡単な作り置きレシピを教えてくれたり、同じ持病を持つ人同士が食事の苦労話で盛り上がったり、またそれに対して栄養士がコメントしたりと、世代や立場を越えた情報共有の場にもなっていました。
ワークショップの後、株式会社富士フイルムが自社のヘルスケア商品を紹介しました。健康まちづくりセミナーでは、参加者の健康意識や生活習慣がどう変わっていくかをアンケートなどで振り返るとともに、希望者を対象に、商品やサービスを試す中で最新の知見を学ぶとともに、利用者としての意見を反映する「モニタリング」も行われます。これは、地域住民や企業・大学・行政などの共創によってまちづくりを進めるWISE Living Labの取り組みの一環でもあります。
にぎわいのあるまちづくりは、そこに暮らす人々の健康があってこそ。健康意識の高い住民と専門家が交流を深め、情報共有やアイデア出しを重ねていくことで、地域の健康増進の取り組みとマッチングできる新しいサービスや製品が生まれるかもしれません。
文:柏木由美子(スパイスアップ編集部)
更新:2017年12月13日 取材:2017年10月4日