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東急電鉄

地元を食べる 地元で食べる ~地産地消にまつわる人々~ 東急沿線で地産地消に取り組む“人”と、その“思い”にフォーカス。食やモノを通して彼らが伝えるものとは…

みずみずしい野菜や果物を作り続けている人たちがいて、その恵みを私たちのもとへと届けてくれる人たちがいる――。東急沿線で地産地消に取り組む、さまざまな人たちを紹介します。

VOL.4 仕掛け人 矢後暁美さん

PROFILE ● やごあけみ

東京都学校栄養職員。調布市、中野区、世田谷区内の小学校勤務を経て、現在、世田谷区立京西小学校勤務。「子どもたちに安全でおいしい給食を食べさせたい」と、だしから手作りする学校給食を実践する。

地元生産者や青果店を巻き込み、地産地消の学校給食。

長年の経験を生かし地産地消の給食に取り組む矢後先生(右)と調理業務責任者の江村和宏さん。
小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、千歳下山白菜、イチゴ、卵。すべて世田谷育ち。
屋外で自由にのびのびと育てられる吉実園の鶏。

――地産地消給食に取り組み始めたきっかけを教えてください。

19年前、調布市の小学校に勤務していたときに、地場の野菜を給食に取り入れようという動きがあって、それからですね。調布は周囲に畑が多く残り、父兄にも農家の方が多くいらして取り組みやすい環境があったのも良かったですね。朝取れの野菜を持ってきていただいて、そうするとみずみずしさやおいしさが違うんですよね。そのときの経験があって、世田谷区に転勤になったときにも同じようなことをやりたいと思っていました。

――世田谷区内にも畑が多く残っていますよね。

11年前、世田谷区立千歳台小学校に勤務することになったのですが、周囲にはまだ畑がたくさん残っていたので、これなら調布のときと同じようにできるのではないかと考えました。給食食材の納入業者さんに「地場の野菜を使った学校給食を作りたい」と相談したら快く引き受けてくださり、地場産の野菜を中心に納入していただくようになりました。また、世田谷区にも協力いただける農家への呼び掛けをお願いしたら、近くで鶏を飼っているという吉実園さんが手を挙げてくださって。平飼いで鶏を育てているということだったので、その様子を見せていただき、小屋の中で卵を産むようにしっかりと管理されていたので「これなら大丈夫」と、産みたて卵を納入してもらうことになりました。そのときのつながりを切らさずに、吉実園さんからは京西小学校に移ってからも産みたて卵を納入していただいています。

――地場野菜を使った献立の子どもたちの評判はいかがですか?

一般的に子どもは、野菜を使ったおかずが嫌いということが多いのですが、京西小学校の子どもたちはよく食べます。新鮮な野菜は食感や風味が良いですからね。給食の残菜率は通常7~10%くらいといわれているのですが、京西小学校では2%ほどに減ってきています。

既製品を使わない手作り給食。

平成25年度最終の給食。お赤飯、牛乳、豆アジの南蛮漬け、カブのレモン漬け、豚汁、カップケーキ。カップケーキはもちろん手作り。
だしはかつお節で本格的に。

――調理方法で工夫していることはありますか?

手作りすることにはこだわっていますね。おかずだけでなく、デザートメニューまで手作りしているので、給食委託をしている調理員の方たちには苦労をかけています。あんこを作るために小豆から煮ますし、カップケーキやゼリーとか……。パンも北海道産の小麦粉を使って校内で焼いています。出来たてを出すことで子どもたちに喜ばれています。
もちろん、だしやスープもかつお節や鶏ガラを使いしっかり手作りです。週に3~4回はご飯給食ですが、和食はいろいろな物が食べられバランスが良い反面、塩分が多くなりがち。だしをしっかり取ることで薄味でもうま味を感じることができて、塩分を控えめにすることができるんですよ。

花壇を畑に変え、野菜を育てて給食に!

平成25年度の2年生は、キュウリ、ナス、トマト、ピーマンを植えました。
トマトは夏休み前に家に持ち帰り、各家庭で食べていただけるようにしました。
自分たちで収穫した大豆で作った豆腐は、味も格別。

――学校でも野菜を作っていらっしゃるそうですが、どんなものを作っているのでしょうか?

給食でいろいろな「食」を体験することが食育につながりますが、さらに生産体験を通じて理解を深めたいと考えています。第2校庭の横に花壇があったのですが、畑にできるんじゃないかと思い、学年の先生方にも相談したらやってみようということになり、畑に変えてしまいました。

――子どもたちが自分たちで野菜を育てているのですか?

教科の学習と関連付けしながら1年生は小松菜、2年生はトマトやナスの夏野菜を育て、3年生以上は総合的な学習の時間で大根、大豆、稲、ジャガイモなど全学年が生産体験をし、給食の食材にも使っているんですよ。

――作った野菜を給食で食べるのですか?

例えば3年生で作る大根では、地場野菜の大蔵大根を種まきから行い、収穫した大根は大根ステーキにして給食で食べますし、4年生で作る大豆は絞って豆乳にし、豆腐作りを体験します。京西小学校は住宅街の中にありますが畑も点在しています。自分たちで野菜を育て収穫してみることで、世田谷でも野菜が栽培されていることを意識するきっかけになればと思っています。

給食を通して、新しい形の地産地消。

食育イベントで来校した笠原さんが、調理スタッフと一緒に給食を作りました。
笠原さんが考えた献立。ご飯、牛乳、サケの竜田揚げ、小松菜のあんかけ、ブロッコリーと内藤トウガラシのごまあえ、白菜のかきたま汁、イチゴの黒みつゼリーかけ。世田谷で育てた野菜と果物、卵を使用し、ご飯は肥料「みどりくん」で育てた「東京農大みどりくん米」。
笠原さんによる、だしの取り方講義の様子。保護者のメモを取る手にも力が入ります。

――たくさんの取り組みをされていますが、どこからアイデアがわいてくるのでしょうか?

いろんな方向にアンテナを張り、いつもヒントを探していますね。昨年度からは、埼玉県行田市のあらい農産さんに直接給食用の米を納入していただいているのですが、これは農業に関するNPO活動をされているエフエム世田谷の番組パーソナリティー・植村春香さんからの話がきっかけになりました。
東京農業大学が、世田谷区内の小・中学校の給食残菜などを活用して「みどりくん」という肥料を作り、さらに「みどりくん」を使ってあらい農産さんが米作りをしています。その米を、給食用に供給していただけるようになりました。

――残菜が肥料になり、その肥料を使って米を作る循環サイクルですね。京西小学校の残菜も使われているのですか?

残念ながら、それは今後の課題です。農大の隣にある桜丘小学校では児童たちが自分たちで残菜を運んでいるそうですが、ここは少し離れているので……。なかなか人手に余裕がなく運搬が課題になっています。どなたか運んでくださる方がいれば、完全な循環サイクルになるのですが……。

――産地連携ごはん給食推進モデル校にも指定されましたね。

米農家とのつながりや地場野菜を使った米飯給食が評価されました。この取り組みを世田谷区全域に広げるために、モデル校としていろいろな食育イベントも実施しています。テレビや雑誌でもおなじみの和食料理人の笠原将弘さんが来校し、ご自身考案の給食メニューを調理員と一緒に作られたときには、保護者からも食べたいという声が多く上がりましたよ。調理後に行った食育講習会では、だしの取り方を教えていただき、保護者の皆さんが、熱心に聞いていましたね。

――保護者の関心が高まれば、世田谷全域に広まりますね。

地産地消の給食に取り組んだことで、世田谷区内にはまだいろいろな地場野菜があることがわかりましたし、食材の多様化には期待が持てました。生産体験や食育イベントを通じ、子どもたちはもちろん保護者の「食」への関心も高まったと感じています。
世田谷区には「世田谷9年教育」という取り組みがあり、京西小学校と用賀小学校、用賀中学校の3校によって「ようがの学び舎」という教育活動が実施されています。この学校連携を通じて、9年間を通した食育年間指導計画も立てられています。京西小学校だけの取り組みとして終わらせず、他校の若い栄養職員へと引き継ぎ、世田谷区内の小・中学校に地産地消活動が広がっていけばうれしいですね。

矢後先生は、以前から地産地消の給食に熱心に取り組まれていますよね。生産者との交流にも熱心で、私も子どもたちの前で話をする機会をいただいたことがありました。

子どもたちからは「鶏を見に遊びに行きたい」と言われ、そんなときは生産者としてやっぱりうれしいですし、これからも子どもたちが安心して食べられる卵を生産し続けなければと感じましたね。

吉実園株式会社 吉岡幸彦さん

世田谷区の住宅街で造園業を営む吉実園の吉岡さん。造園用の植木が植えられた広大な敷地で、青い卵を産む珍しいアローカナや、ボリスブラウン、烏骨鶏などを平飼いで育てています。餌に遺伝子組み換えのトウモロコシを使わず、安心して食べられると評判。鶏小屋の中で産卵するようにしつけられ、見学した矢後先生も、しっかりとした管理に安心してお付き合いを始めることができました。

吉実園

千歳烏山駅

詳細情報を見る

更新:2014年5月15日 取材:2014年4月

東急沿線 地産地消マップ
特集「地元を食べる 地元で食べる」で紹介してきた東急沿線の地産地消スポットをGoogleマップでチェック! 各ポイントをクリックすると、写真や詳細情報を見ることができます。

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