スマートフォン用ページへ
東急電鉄

東急沿線 街×人 おおたオープンファクトリー~イベントを支える人と“モノづくりのまち”大田の話~ 

さまざまな町工場が集い、“モノづくりのまち”として世界に負けない技術を発信している大田区。東急多摩川線の下丸子・武蔵新田駅周辺エリアでも、職人の皆さんが日々、さまざまな製品を作り続けています。
そんな町工場の魅力を発信しようと、大学、観光協会、町工場が共同して立ち上げたイベント『おおたオープンファクトリー』。4回目の開催を11月29日(土)に控え、このイベントの魅力と舞台裏について、それぞれの代表にお話を伺いました。

岡村祐さん 栗原洋三さん 佐山行宏さん
  • PROFILE●おかむらゆう
    首都大学東京 都市環境学部・大学院都市環境科学研究科」助教・博士(工学)。『おおたオープンファクトリー』をサポートする大学側のコーディネートを担当。趣味は野球観戦。広島カープのファン。「クライマックスシリーズは負けちゃったけど、イベントのロゴが赤っぽいからいいかな(笑)」とのこと。

  • PROFILE●くりはらようぞう
    大田観光協会」の事務局長。『おおたオープンファクトリー』では地域や行政との交渉役、コーディネート役。趣味は飲み会への参加。「このイベントにかかわってる若い人とにぎやかにお酒を飲むのが楽しいですね。いろいろな話を聞くのは刺激になるし、こっちも若返った気になれます(笑)」とのこと。

  • PROFILE●さやまゆきひろ
    工和会協同組合」の副理事長。「栄商金属株式会社」の代表取締役社長。『おおたオープンファクトリー』の主役となる数々の工場のまとめ役を務めています。趣味は魚釣り。「釣りは全般的に好きなんですけど、なかでも“渓流釣り”ですね。こう言うと高尚な感じがするでしょ(笑)」とのこと。

“モノづくりのまち”を盛り上げる「大田クリエイティブタウン研究会」

『おおたオープンファクトリー』が始まったのは2012年2月のこと。その後、2012年12月、2014年2月に行われ、今回で4回目になります。
イベントには首都大学東京をはじめ、横浜国立大学、東京大学の学生たちが参加。写真は下丸子インフォボックスの様子。
大学、町工場、観光協会。立場の違いを活かしたさまざまな意見を出し合う三人。

――まずは「大田クリエイティブタウン研究会」についてお伺いしたいのですが。この研究会の活動が、やがて『おおたオープンファクトリー』の誕生へとつながるんですよね?

栗原 そうですね。「大田クリエイティブタウン研究会」というのは首都大学東京および横浜国立大学の研究室(都市計画、建築、まちづくり、観光などを研究)と大田観光協会が一緒になってやっているものなんですけど。

――どういった経緯で発足したんですか?

岡村 2009年だったかな。観光協会と首都大学東京とで地域の観光資源……例えば池上本門寺とか馬込文士村とかをプロモートする取り組みができないか、という話になりまして。そのときに「大田クリエイティブタウン研究会(当時はモノづくり観光研究会)」という形での活動が始まったんです。で、そうこうしているうちに“やっぱり大田はモノづくりだよね”ということになって、そこを集中的に研究しようじゃないか、と。私たち大学側は工場のことは全然わからないので、とにかく最初はたくさんお話を聞くっていうことから始めました。2年間ぐらいかけて、いろいろ学んで、じゃあこの特色をどういう形で発信していったらいいだろうか、ということを考えるようになって。そのひとつの方法として『おおたオープンファクトリー』という形態を見つけ出しました。実際にスタートするにあたって、さらに工和会協同組合(矢口・下丸子・千鳥・鵜の木地域のモノづくり企業による組合)さんにも入っていただいて。観光協会と工和会と大学。この三者で実行委員会を立ち上げたんです。

――ここにいらっしゃるお三方で言えば、まず栗原さん(大田観光協会)と岡村さん(大学の研究室)で計画を立てて、その実現のために佐山さん(工和会協同組合)に声を掛けられた、というわけですね。

佐山 我々のところの青年部に話がきまして。彼らが「どうしようか」って悩んでるから「面白そうだからやろうよ」って言ったんですよ。とりあえず最初はお手伝いという形から始めたんですけどね。
岡村 2011年の秋ごろ、大田工業連合会の若手の皆さんに対して少し発表させていただいたんですよ。それに工和会さんが興味を示してくださって。じゃあ、ということで半ば強引に押し掛けたっていう(笑)。

元気な大田を見せたい! その想いが“オープンファクトリー”へ

シナノ産業にて。接客に慣れていない町工場の人たちも、イベント当日はがんばって来場者をおもてなし。ボランティアスタッフがそれをサポートします。
「すごい!」「こんなふうにして製品ができていくんですね」と、感嘆の声をあげる来場者たち。職人さんも思わずにっこり? 多摩川鈑金工業所にて。
武蔵新田インフォボックスで、町工場の魅力を伝えようと懸命な学生たち。準備段階から何度もこのエリアに足を運び、町の人たちとの交流を深めていくのです。

栗原 大田区は“モノづくりのまち”として、すごく元気があるわけですけど。そんな元気な大田を見せたい、もっと外に向かって町工場の元気さをアピールしたい、という気持ちが何年も前からあったんですよ。ただ現場で働いている人は「町工場なんか見たって面白くないだろう」という感じで。しかも大きな工場じゃないから、なかなか時間も人手もないじゃないですか。だから、どの町工場も我々の取り組みに対しては消極的だったんです。

――職人の皆さんはすごい技術を持ってるのに、それを見ても面白くないだろう、というふうに考えているんですか?

佐山 というか本人たちは、すごいことをやってると思ってないんですよ。それが日常だから。だから「こんなもん作ってるところを見てどうするんだよ?」って話になるわけです。
栗原 でも『おおたオープンファクトリー』をやることになって、ちょっとずつ協力していただけるようになって。

――その変化には何か理由があるんでしょうか?

佐山 ひとつは自分たちから発信していかないとまずいぞ、という気持ちが出てきたっていうのがあるでしょうね。それまでは、いい仕事をしていれば営業なんかしなくてもどんどん依頼がきたんですよ。噂が噂を呼んで、いい評判が広まっていくから。ところが最近はインターネットに広告を出すことに長けてる企業のほうに仕事がいっちゃう。これをなんとかしなきゃな、という意識が出てきたんですよ。そして、もうひとつは『おおたオープンファクトリー』というイベントが大学の研究室を中心に成り立ってることが良かったんだと思います。学生さんたちが一生懸命動いてることがね。

――どうしてですか?

佐山 若い人たちがモノづくりに目を向けたり、そこから何か新しいことをやろうとしてるのを見てると、だったら手伝ってやるか、という気持ちになるんじゃないですかね。
栗原 観光協会が相談に行っても全然相手にしてくれなかった職人さんたちが、そういう若い人だと腰を上げるんです。
佐山 それは工和会が行っても、あるいは行政の人間が行っても同じですよ。話をしても「何しに来たんだよ? それをやるといくら儲かるんだよ?」とか言われちゃう(笑)。でも大学の若い人たちがアイデアを出したり汗を流して準備したりするのを見てると、じゃあボランティアでやってやるか、となる。
栗原 それは学生の皆さんが物怖じしないで、どんどん積極的にコミュニケーションをとったり、それから職人さんの技術に対して素直に「すごい!」って驚いたりするからでしょうね。それもあって、だんだん参加企業が増えていきました。
岡村 大学側としては特に“学生だから”という意識でやってるつもりはないんです。だから地元の方が、そういうふうに受け止めてくださったっていうのは意図していなかった効果なんですけどね。

工場間の連携「仲間回し」の工程を巡りながらモノづくりを体感!

学生のアイデアと職人の技がコラボするカプセルトイ「モノづくりたまご」。今や『おおたオープンファクトリー』の名物です。
佐山さんの手にあるのは「仲間回しラリー」で作るアイテムの試作品。さまざまな工程を重ねて最後に何が出来上がるかは、イベントに参加してのお楽しみ!

――2012年から始まった『おおたオープンファクトリー』。金属加工・機械製造業の町工場を一般開放するこのイベントも4回目となりますね。今回の特徴は?

岡村 目玉企画のひとつは「モノづくりたまご」。工場製品が入ったカプセルトイなんですけど、これまでと違うのは今回は地元の日本工学院専門学校に参加してもらっていること。学生さんたちからデザインを公募して。コンペで選ばれた作品を制作するんですよ。もちろん、どれも全部“メイド・イン・大田”です。
佐山 学生さんのアイデア。大田の工場の技術。そのコラボレーションなんですよね。工場のほうにも、すごくいい効果というか影響というか、そういうものがありまして。というのも学生さんから出てきたアイデアを、ちゃんと実現して製品化するために工場側も必死に知恵をしぼってるんです。親の代から続いてる仕事が多い町工場なんかだと、なかなか新製品を作るっていう経験をしてなくて。特に若い世代に代替わりしてからはね。そういう意味では、ものすごくいい経験をさせてもらってるなあと思いますね。
栗原 それから「仲間回しラリー」も目玉企画のひとつと言っていいんじゃないですかね。大田で伝統的に行われてきた工場間の連携によるモノづくりの過程が体験できる。
佐山 大田区って、わかりやすく言えば大きな会社の中の各セクションが、そのままバラバラになって分社化されてるような状態なんですよ。板金や溶接や加工っていう工程を、それぞれの会社、それぞれの工場で順番に踏んでいって、そして最終的な製品が仕上がるんです。それを「仲間回し」と呼んでるんですけど。要するに“下請け”じゃなくて“横回し”なわけですね。「仲間回しラリー」は実際に工場を回ってもらって、その工程を楽しんでもらう企画です。素材が製品になるまでの、その流れを体験なんかも織り込みながら知ってもらおうということです。

エリア拡大で、より充実する『おおたオープンファクトリー』

「モノ・ワザ ラウンジ(工和会館)」では、今回も職人たちのトークセッションなど、さまざまな催しが予定されています。
旧工場の雰囲気を残してリノベーションした「くりらぼ多摩川」には、今回も「くりらぼカフェ」が登場。

岡村 今回のテーマは「技の縁、ひろがる。」ということで拡大戦略をとっていまして。これまでよりもエリアを広げて本羽田の「テクノWING大田」や東糀谷の「OTAテクノCORE」といった工場アパートが会場に加わったり。商店街と連携した「武蔵新田ちょい呑みフェスティバル」があったり。もちろん「モノ・ワザ ラウンジ」や「くりらぼ多摩川」でも催しがありますし。当日は下丸子駅前と武蔵新田駅前にインフォボックスが設置されますので、まずそこに寄ってマップを手に入れていただければと思います。
栗原 将来的には1日だけのイベントじゃなく、もっと数日間だったり数週間だったりっていう感じで開催期間を延ばしていきたいんですけどね。
佐山 “オープンファクトリー月間”みたいなね。
栗原 そう。もちろん、それは1カ月間も工場を開放するってことじゃなくて。いろいろな工場が順番に1日ずつ開放していくことで、より多くの人に大田の魅力をアピールできれば、ということなんですけど。2020年の東京オリンピックのころにはそうなればいいな、と思ってます。

――皆さんが熱く語ってくださるので、ますます『おおたオープンファクトリー』が楽しみになってきました。

岡村 ただ単におしゃべりなだけじゃないか、という話もありますけど(笑)。

下町でもない 都会でもない この町ならではの魅力

下丸子駅から「モノ・ワザ ラウンジ」へと向かう道も、まっすぐにのびています。

――それでは最後の質問です。皆さんが考える下丸子や武蔵新田の魅力って何でしょうか?

栗原 下町でもない。都会でもない。どことなく“故郷”っていうイメージがあったりもする。特に町工場がいっぱいあるエリアなんかは、ずっと昔に地方から出てきて自分の腕一本でやってきた人が多いからね。そんなところが魅力だと思いますね。
佐山 ゆるやかな生活。穏やかな生活。そういう日常があるっていうことですかね。逆に言えば驚きが少ないっていうことなんだけど、でも、それこそが魅力なのかな。
岡村 この町は昭和の初めに工場を誘致するために区画整理されたんですよ。だから今でも、どこまでも見通せるまっすぐな道がたくさんあるんです。そういうところもいいなあって思いますね。その道を基盤に町ができていて、そこで今もモノづくりをやっている。歴史を感じますよね。

イベント写真提供:大田観光協会 撮影:市川勝弘(一部除く)
更新:2014年11月12日 取材:2014年10月

コメント

  • 本コメントはFacebookソーシャルプラグインを使用しており、これによって生じた損害に対して当社は一切の責任を負いません。
  • コメントを投稿するにはFacebookにログインする必要があります。

おすすめの記事