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多摩川の自然の中で“子どもが真ん中”の遊び場作り ~せたがや水辺デザインネットワーク~

子どもがのびのびと遊べるプレーパークを作ることを目的として発足した「砧・多摩川あそび村(通称:きぬたまあそび村)」。自然の川遊び体験から学ぶ「せたがや水辺の楽校」。多摩川をベースに“子どもが真ん中”をモットーとして活動してきた2つの団体が統合し『NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク』としてバージョンアップ!
近年、大規模な再開発が進む二子玉川の街の移り変わりを身近に感じながら、街のすぐそばを流れる多摩川の豊かな自然を生かし、遊びを通じた子どもたちの環境教育と地域ネットワーク作りに取り組むお二人にお話を伺いました。

中西修一さん 上原幸子さん
  • PROFILE●なかにししゅういち
    河川環境の専門家として世田谷区や地方自治体とかかわってきた経験をもとに、「NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク」事務局として活動をサポート。学生時代から続ける唯一の趣味がスキューバダイビング。深く青い海の底で、ボーッとしながら日常では味わえない感覚を楽しむそう。

  • PROFILE●うえはらさちこ
    「きぬたまあそび村」と「せたがや水辺の楽校」の発起人であり「NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク」代表。遊び場作りを進める中で川遊びの面白さにハマり、活動日以外に一人で多摩川に手網を持って入り、エビを捕ったことも。手の届くところにいるセミやトンボを見つけると、無性に素手で捕まえたくなる自然あそび好きを自認。

“自分の責任で自由に遊ぶ”がモットーの遊び場

多摩川の河川敷、二子玉川緑地運動場のほぼ真ん中。「きぬたまあそび村」の活動日はオレンジののぼりが目印。
「せたがや水辺の楽校」の活動場所は多摩川の中。豊かな自然すべてが教材。
「せたがや水辺の楽校」の発足当時を思い出し、「突然訪ねてきたよね」と中西さん。「そう、ピンポーン。はじめまして。よろしく!って」と、笑う上原さん。

――まずは「NPO法人 せたがや水辺デザインネットワーク」の前身である「きぬたまあそび村」と「せたがや水辺の楽校」についてお伺いしたいのですが、上原さんが始められたものなのですか?

上原 そうです。大学時代から世田谷のまちづくりにかかわる活動をしていましたので、それがそのまま遊び場作りにつながっているのですが、一番のきっかけとなったのは、子どもが小学校に上がる時に世田谷区に引っ越してきたこと。近くに多摩川があり外遊びには恵まれた環境であるにもかかわらず、子どもが外で遊んでいないことに気付きました。近所の子どもたちも、家でゲームばかり。でもそれって、子どもを危険から守るためにあれダメ、これダメと規制が多く、公園も誰も遊んでいない場所になってしまった。そこで、行けば誰かがいて安心して遊べる集合拠点が必要なんじゃないかと。それならいつでも自由に遊べるプレーパークを作ればいいと思い立ち、同じ思いを持っていた賛同者を集め、1999年に「きぬたまあそび村」を立ち上げました。多摩川の河川敷で遊び場づくりをするためには、地域で「水辺の楽校」をつくることが必要だと知り、中西さんたち地域のいろいろな立場の方にお声掛けして2002年に「せたがや水辺の楽校」準備会を発足し、2006年に開校しました。

――「きぬたまあそび村」の活動内容について教えていただけますか?

上原 「きぬたまあそび村」は、子どもたちにもっと外遊びをして欲しいと思う子育て中の親たちが中心となり、地域の住民によって運営されている多摩川の河川敷にある遊び場です。週に3回、月曜・水曜・土曜が活動日になっていますが、プログラムが決まっているわけではなく、何をして遊ぶかは子ども次第。“自分の責任で自由に遊ぶ”をモットーに、やりたい気持ちを大切にし、思い思いに遊ぶ子どもたちを大人がゆったりと見守る空間なんです。2006年からは、世田谷区の自然体験遊び場事業としての委託を受けています。

――野外での遊びは子どもの成長に欠かせませんね。「せたがや水辺の楽校」はどうやって発足したのですか?

中西 「せたがや水辺の楽校」は、国土交通省、文部科学省、環境省が連携して始めた“水辺の楽校プロジェクト”の世田谷版です。水辺を子どもたちの身近な自然体験の場にしようというもので、かつては護岸工事一辺倒だった河川行政が、河川環境を見直し、地域における環境学習や自然体験ができる水辺づくりへと変わってきたんですね。

上原 “えのきん”と出会ったことも大きかったわね。

――“えのきん”ですか?

上原 私が「きぬたまあそび村」を始めたころ、多摩川博士であり通称“エノキン”と呼ばれているフィールドアドバイザーの榎本正邦さんに出会って、河川敷で遊び場づくりをしたいなら「水辺の楽校プロジェクト」が必要だと教えられました。そこで多摩川水系河川整備計画づくりのワークショップに参加し、「水辺の楽校予定地」に採択して頂きました。中西さんとは、地域で水辺の楽校協議会をつくる際に、出会うことができました。

中西 “水辺の楽校プロジェクト”に認可されれば、安全に水辺に近づけるようにする河岸の整備について、国土交通省からの支援も頂けると。それで地域の人づてに環境整備に詳しい人ってことで僕が紹介され、上原さんから連絡を頂き「よろしく」ということになりました。

上原 当時、私の意識の中には、ロケーションとしての多摩川しかなかったのですが、川遊びの楽しさも教わりました。私は葉山の海で育ったので川遊びをしたことがなかったのですが、川は生き物の存在が海よりもずっと身近で、タモ網でエビや魚を捕まえる“ガサガサ”をすれば子どもでもすぐに捕まえられるので「これはおもしろい!」とすっかりハマってしまいました。

発足から15年、念願の子育て拠点「きぬたまの家」をオープン!

待機児童が社会問題化する中、地域の子育て支援に自宅を生かしてほしいというオーナーさんの思いを受け、実現した「きぬたまの家」。(写真提供:二子玉川経済新聞)
「きぬたまの家」では、乳幼児を持つお母さんが1日100円で利用できる“おでかけひろば”を開設。

――連携しながらも別々に活動してきた2つの団体が、「せたがや水辺デザインネットワーク」として統合する理由はなんでしょう?

上原 以前より一緒になった方がいいんじゃない、といわれてきたんです。運営スタッフもかぶっているし。でも、中西さんのようないろいろ考えて動いてくれる人がいると、お母さんたちはどうしても頼ってしまうんですね。通常は受益者である子育て当事者が、「きぬたまあそび村」では運営主体であることに大きな意義があるのに、それでは自主性がなくなってしまうし、活動が広がらない。それと、川での子どもの活動は、遊びだけでなく、教育プログラムとして学校の理解を得ることが大切なので、意識的に一緒にはしないでいました。

中西 また、子どもの遊びや子育てに対し、教育は行政の担当窓口が違うという理由もあります。特に「せたがや水辺の楽校」では“国”も絡んでくるので、さらに複雑なんです。よく縦割り行政とかいわれますが、同じ子どものことでも、管轄が違うとなかなか難しい部分があるんですね。

――なるほど。そんな中でまた新しい試みを始められました。

上原 そうなんです。2014年5月に、「きぬたまあそび村」が活動する「せたがや水辺の楽校はらっぱ」から徒歩3分の鎌田の住宅地に、地域の子どもと乳幼児を抱えるお母さんを支援する、一時預かり付き子育て広場「きぬたまの家」をオープンしました。「きぬたまあそび村」が発足して15年。地域の方に支えられて遊び場を続けてきましたが、ついに屋根のある活動拠点となる場所ができました。これを機会に2つの団体を一緒にして、子どもたちの遊びの幅をもっともっと広げるため、地域で活躍する後身を育てていくことを視野に統合を決心しました。

多摩川の環境を生かした人材育成で経済的な自立へ

“ガサガサ”に夢中の子どもたち。
“ガサガサ”で捕まえたテナガエビ。「うわーっ、こんなに捕れた」と子どもたちの歓声があちこちで上がります。

――活動はどのように変わっていくのでしょう?

中西 遊びに関する活動ということであれば変わりません。「あそび村」はこれまでと変わることなく、日常的に子どもたちが遊べる場所として運営していきますし、「水辺の楽校」でも、今やアユが遡上する川として知られるようになった自然豊かな多摩川を“核”に、子どもたちが普通に自然体験できる場所として活動します。「NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク」としては、取り組んでいこうと思っていることはたくさんあるんですが、一番は経済的に自立できる仕組み作りでしょうか。

上原 そうなんですよ。プレーパークのように毎日遊びに行ける場所を目指して、あそび村の活動日も増やしたいけど、続けられないと意味がありません。行政の支援や助成金に頼っているだけでは、限界がありますし運営が安定しません。

――例えばどんな仕組みが考えられるのでしょうか?

中西 今は、企業の環境への意識も高いですから、企業のCSR活動をサポートするという方法はあるでしょう。NPOという法人格となることで対外的な契約もしやくなりますし、企業への環境講座とか、ネイチャーツアー、アウトドア体験、イベントのサポートなどが考えられると思うんです。子どもたちの中から指導できる専門性を持った人材を育て、要請に応じて派遣する。そうすることで地域に新たな仕事を作り出すことができるし、多摩川の自然をベースにした地域産業になりますよね。

上原 小学校では、環境学習の一環として学校ビオトープなどもあります。「せたがや水辺の楽校」では、近隣の学校への協力として、多摩川の体験授業を行っています。授業の一環として、子どもたちが “ガサガサ”を体験しにくるんですが、授業だと1日だけの活動です。でも第1日曜日の“あそびの日”にここに来れば、授業で体験したことを自分でもう一度確かめることができるんです。ほら、遊びの中で自分が体験したことって記憶に残りますよね。自然遊びがベースの私たちなら、“学び”の機会も違ったアプローチで提供できるんじゃないかと思っているんです。

自然を生かしたイベントは、季節が巡るのを楽しみに待つものに

「瀬田四丁目広場」も活動の場の一つ。地域の人があまり訪れることのなかった場所を馴染みのあるものに、と利活用検討ワークショップを運営。
二子玉川は鮎の産卵場所としても有名。毎年10月には、多摩川漁協の方が捕まえた鮎を頂き、子どもたちと一緒に炭火焼きに。魚が苦手な子どもも頭からかぶりつき、おいしそうに食べます。

――年間を通じさまざまなイベントを開催していますが、これから予定されているものはありますか?

上原 私たちが目的としているのは、あくまで日常での子どもたちへの“居場所の提供”なので、いわゆるイベントという形ではあまり考えていないんですよ。季節に合わせた活動を企画する時には、ひな祭りをしようとか歳時記的なイベントではなく、春ならヨモギを摘んで草もち作りとか、秋には多摩川で捕まえた鮎を炭火で焼いて食べるとか、多摩川の自然の中から見つけられるものを基本に考えています。イベントのような形で広報するのは、来てもらうための動機付け。初めて来る人にも来やすいように、知ってもらうためのきっかけづくりです。

中西 毎年、4月には「水辺の楽校」の開校式で、いろんな人に来てもらって水辺コンサートを開いたり、地域の遊び場を広げるためにミニコンサートを開いたりしますが、イベントらしいのはそのくらいかな。あとは、あくまでここに来るきっかけになればいいと思ってやっています。
ただ、NPOとしてスタートすることを知ってもらおうと思い、3月8日に世田谷区内の多摩川沿いにあるいくつかの小学校や、「水辺の楽校」に遊びに来ている子どもたちが、この一年の活動を発表する「多摩川子どもシンポジウムin 世田谷」の開催を予定しています。私たちがNPO法人として活動を始めることもあり、もう一度一緒にこれからの多摩川の利用について考える場にしましょうということで呼び掛けました。今年は都立世田谷総合高校で開催しますが、来年は多摩川流域すべての「水辺の楽校」に呼び掛け、二子玉川で開催したいなと思っているところです。

二子玉川は豊かな自然環境と都市のバランスの良さが魅力

世田谷に引っ越して20年。「自分が楽しいと思っていたことを子どもと一緒にやっていたらこうなりました」と、開発が進む二子玉川の高層ビルをバックに笑う上原さん。
インタビューの間もずっと愛犬がそばに寄り添う姿が印象的な中西さん。

――二子玉川駅周辺の再開発が進み、大きな企業の本社が移ってくることが決まっています。その家族や子どもたちで街がさらに大きくなりますね。

上原 そうなんです。社員のご家族が、もうずいぶん引っ越してきていますよ。

中西 川遊びにもいらっしゃいますが、中にはパンプス履きのお母さんとかもいたり……。川というのは、見ただけでは安全の見極めができない場合も多い。都心で生まれ育ち川のことを知らない大人も多いですが、だからと言って近づかないのではなく、そういう大人たちこそ子どもと一緒に川遊びをして、体験から学んでほしいと思います。

――大人も子どもも、一緒になって遊びながら学ぶ。二子玉川の環境は、まさに最適な場所ですね。

中西 二子玉川は、新宿や渋谷、横浜にも近いという街としての便利さもありながら、農地があり川があり、都心の公園のようなつくられた環境ではないそのままの自然が魅力です。自然と接しやすい大都会というバランスを守っていけるといいですね。

上原 このエリアには、多摩川だけでなく 野川と仙川という川もあり、豊かな自然環境という言葉がぴったりの街なんです。世田谷でもこんなことができるんだって、その驚きを子どもたちと一緒にたくさんの人に体験してもらい、子どもたちを真ん中に、地域でつながる「NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク」になれたらいいですね。

※『NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク』は、第21回 公益信託世田谷まちづくりファンド助成事業「キラ星応援コミュニティ部門」に採択されました。

更新:2015年3月4日 取材:2015年2月

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