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東急沿線 街×人 自由が丘をミツバチが飛び交う緑豊かな街に 「丘ばちプロジェクト」隊長 中山雄次郎さん

「丘ばちプロジェクト」は、自由が丘の街で西洋ミツバチを育てハチミツを作る取り組み。開始から7年目を迎え、商店街の方々や住民から応援されるだけでなく、地元の小学校から地域学習の依頼が来るほど地域でも親しまれる活動となりました。日々の活動における苦労や楽しさ、今後の展望など詳しいお話を、丘ばちプロジェクトの「隊長」である中山雄次郎さんにお聞きしました。

中山 雄次郎さん

PROFILE●なかやまゆうじろう
自由が丘商店街振興組合事務長。「丘ばちプロジェクト」を企画しけん引してきたプロジェクトの隊長。スマートなルックスとは裏腹に、ひとつのことに夢中になると周りが見えなくなる性格だそうで。学生時代はラグビーに熱中。自転車で全国を巡った経験もあるとか。

緑の豊かさを証明するための「丘ばちプロジェクト」

街に点在するバラから蜜を集めるミツバチ。
商店街には、ドリンクを買うと「自由が丘森林化計画」に貢献できる自動販売機も。
「銀座ミツバチプロジェクト」に大きな刺激を受けたと語る中山さん。

――まずは「丘ばちプロジェクト」がどういうものか簡単に教えてください。

自由が丘の街に緑を増やす「自由が丘森林化計画」の核となる活動で、2009年3月から始まった事業です。もともとミツバチは、そのエリアの自然環境が豊かかどうか、食物連鎖がうまくいっているのかどうかを示す環境指標生物です。自由が丘の街は、都会でありながら住環境も良く、もともと緑が多いことには自信がありました。それを証明したいなという気持ちがあり、自由が丘の街にミツバチを放ちハチミツを作りはじめたのです。

――取り組みを始めるきっかけは何かあったのでしょうか?

銀座でミツバチを育てる「銀座ミツバチプロジェクト」のところに見学に行ったのがきっかけです。実はそれ以前に、パリのオペラ座で養蜂をしていることを耳にしていて、市民と街の自然がつながるとてもいい活動だなと思っていたんですね。そんな時に「銀座ミツバチプロジェクト」の精力的な活動を目の当たりにして、「自由が丘でもやってみたい」と思い立ったのです。自由が丘の街には庭のある住宅も多く、店先のプランターで植物を育てているお店もたくさんありました。これだけ緑豊かな環境があるならミツバチを飼えるのではと考えたわけです。

――ミツバチとはいえ針を持った蜂の一種です。住宅や商店街で飼うことに反対などはありませんでしたか?

実は「銀座ミツバチプロジェクト」の方から、ミツバチは針を持っているので周りの理解を得るのは大変だよと聞かされていました。特に自由が丘には住宅街も多いですから、いろいろ反対も出るだろうなと私も心配していたんですね。住民団体への説明では怒られるのを覚悟して臨みました。ところが、「自然に関する取り組みは教育にいい」「どんどんやりなさい」と応援してくれたのです。それどころかボランティアを募り協力までしてくれました。そんな住民の方たちの温かい応援を受けたときに、自由が丘で養蜂をやっていく自信ができました。ちなみに今、「丘ばちプロジェクト」を支えてくれているボランティアメンバーの多くは、初めに町内から応募してくれた住民の方なんですよ。

最盛期には約30万匹のミツバチが自由が丘の街を飛び交う!

屋上に設置されている巣箱。今年は3箱置かれています。
無数の働き蜂の中から女王蜂を見つけるのは一苦労(白い印があるのが女王蜂)。
街のいたるところに、ミツバチが蜜を集めるためのプランターが設置されています。

――今では自由が丘のあちこちでミツバチを見かけるようになりました。現在、どれくらいの数が飛び回っているのでしょう?

今は1群が約1万匹。うちでは3群飼っていますから、3万匹ほどです。春先からどんどん増えて、1年のうち一番数が増える梅雨明けぐらいになると、10倍の30万匹に増えます。そのあと、10月ぐらいまで数を保っていますが、寒くなるにつれ、蜜の消費量を減らすために自分たちも数を減らし、冬にはもとの3万匹ぐらいまでに減ります。ちなみに、年間で採れるハチミツの量はおよそ100キロ。プロの養蜂家さんに言うと笑われてしまうような量です。ただ、何箱も巣箱がある養蜂家さんたちと違って、私たちは3箱、3群しかありませんから、ミツバチたちはずいぶん頑張って採ってきていると思います。

――日々の世話はどういうことをしているんですか?

桜が咲き始めると、週1回、巣箱を開けて、女王蜂が元気かどうかを確認し、採蜜します。実は女王蜂が元気なうちは、新しい女王蜂を産ませてはいけないんですよ。新しい女王蜂が育ってしまうと、「分蜂」といって、古い女王蜂が新しい女王蜂に巣箱を譲って、半分家来を連れて出て行ってしまいます。そうなってはいけないので、1週間に一度、女王蜂の状態を調べ、元気なら新しい女王蜂の卵がふ化しないよう処置します。

――そのためにはまず膨大な数のミツバチの中から女王蜂を探さないといけないわけですよね? それってすごく大変では?

おっしゃる通りです。というのも、ミツバチはひとつの巣箱に多いときで10万匹もいます。その中から1匹の女王蜂を見つけ出さないといけないわけですから。例えるなら、首都高速の上からヘリコプターで白のベンツを探すみたいな感じでしょうか。それくらい骨の折れる作業で、毎回3時間ぐらいかけて女王蜂を探しています。

――養蜂といえば、林や森の中など自然の中で行うものというイメージがあります。丘ばちプロジェクトのような都心部の取り組みならではの工夫などはあるのでしょうか?

この辺りには、大型の緑地や公園がないので、庭がある住宅の皆さんには、なるべくミツバチが好む植物を植えてくださいとお願いすることがあります。また商店街の中でプランターを置いてもいい場所を探して、植物を増やす活動もしています。ちなみに10月に行われる「自由が丘 女神まつり」では駅前の女神像の周りに100株ほどのバラが飾られるのですが、それをイベント終了後に組合員の店舗の方に里親になってもらっています。これもミツバチが蜜を集める植物を街に増やすための工夫のひとつですね。

一番の喜びはプロジェクトを通して “つながる”こと

中山さんが一人で運んだという大型プランター。
商店の方々の協力もあり緑が増加。中山さんいわく「街のボーボー化」が進んでいるとか。

――丘ばちプロジェクトで「大変だな」と思うのはどんなことでしょう?

ときどき肉体労働をすることがあって、それは体力的につらいと思うことはありました。例えば、駅前ロータリーが、2011年に作りかえられることになったのですが、それまで自由が丘商店街では、女神像周辺や交番前の花壇の土を一生懸命作っていたのですね。とてもいい土だったので捨ててしまうのはもったいないなと思って、大型プランターに移し、ミツバチが好きな植物を植えることにしたのです。昼の間は商店街振興会の事務仕事がありますから、それが終わったあと、毎日夕方から一人で作業したのですが、このときはなかなか大変でした。

――路上で大型プランターを拝見しましたが、あれを一人で扱うのは本当に大変だったと思います。緑を増やすために地道な努力をいろいろ重ねているわけですね。

ただ、本人はあまり苦労と感じていないんですよ。半分趣味のようなところもあって、楽しみながら取り組んでいるというのが本当のところです。何より自然はきちんと返してくれますから。例えば、植えたばかりのときは、本当に小さな苗で「大丈夫かな」と思うような植物も、世話をすれば壁面を覆うような大きさに育ちます。また、ミツバチが好きな植物は花が咲き、匂いがするものが多いので、街行く人が匂いをかいでいるのを見たりすると、「やって良かった」という気持ちになります。

――それは励みにもなりそうですね。逆に活動をしていて一番うれしいのはどんなことでしょう?

さっきお話ししたことと重なりますが、丘ばちプロジェクトを始めるときに住民団体から反対されるかなと思ったら、逆に応援してくれたときはうれしかった。あるいは丘ばちプロジェクトがテレビなどで紹介されたときに、「なんであんな活動が紹介されるんだ」といった否定的な反応は一切なく、街中の皆さんが「頑張っているね」とうれしそうに声を掛けてくれます。

――街全体がひとつになって応援してくれるという感じですね。

「ミツバチを中心にして、人がつながる」という感じかもしれません。例えば、街に置いたプランターも、われわれの事務所から近いものは水をあげたり草抜きをしたりと手入れできるのですが、少し遠くなるとなかなか手が回りません。ところが、心配して遠くのプランターに行ってみると、キレイに手入れされているんですね。あとで聞くと、近隣のお花好きの店員さんが手入れしてくれていたことが分かりました。そういった「つながり」を実感できたときは本当にうれしいです。

あえてイベントごとにせず、自然と街に根ざしていく活動に

自由が丘の街にバラを増やし、おいしい「バラ蜜」を採る計画も進行中。
将来、自由が丘の街の“ご神木”のようになればと思いを込めて新設したクスノキ 。

――地元の小学校から依頼を受けて、特別授業をなさったそうですが、子どもたちの反応はどうでしたか?

すごかったですよ。40人くらいの子どもたちの前で授業をしたのですが、みんな目をきらきらさせて話を聞いてくれて、私が言ったことをすごい勢いでノートに筆記していくんです。調子に乗ってミツバチのことを次々話し出すと、「先生早過ぎてノートにメモできない」と止められたりもしました。授業の前にもいろいろなことを調べているみたいで、「どの花を植えたらミツバチは来ますか?」「女神まつりで花の種をもらったんですが、何月に植えればミツバチは来てくれますか?」など、質問もとても多かったです。

――興味深くお話を聞いてくれていたんですね。子どもたちにもっと知ってもらうために、活動を手伝ってもらうような計画はあるんですか?

子どもたちには、もっとナチュラルに、日々の生活の中で私たちの活動について理解してもらおうと考えています。あまりイベントをたくさん開催して話題性や商業性の強い活動にしてしまうと、丘ばちプロジェクトらしさがなくなってしまうような気がしているので。

――あえてイベントにしなくても、きっちりと街ぐるみで、住民の方と商店街を結んだ活動になっているところが、時間がゆったりと流れる自由が丘らしい取り組みのような気がします。ではこれからの展望は?

今いい流れで来ているので、この流れを壊さずに、少しずつ輪を広げていければいいなと考えています。あと、自由が丘の街は建物の耐用年数がかなり限界に来ているのものも多く、これから少しずつ建て替えが進むと思います。そこで絵に描いたような再開発や大規模開発に偏らないよう、丘ばちプロジェクトが自然やゆったりとした時間の流れを感じさせる、何か穏やかさを保つ目印のようなものになればいいなと考えています。

――最後に、中山さんが考える自由が丘の街の魅力について教えてください。

「オンリーワン」の魅力があることです。いろんな街が何かのナンバーワンを目指したがりますが、自由が丘はどこにもない魅力があると思うんですね。それは都心に近くて便利で、しかも都会的なセンスもありながら、穏やかさを持っていることです。また、私は仕事柄、都心のいろいろな街づくりをしている方々とも接するのですが、企業の論理や資本の論理が働いているところが多い。でも自由が丘は地主さんもまだしっかりといて、地域の皆さんで街をつくっていこうとしているんですね。それが今の街の魅力を支えているような気がします。「自由が丘」の名前には、誰のものでもなくみんなの街だという意味があるんですね。この「リバティ(自由)」の感覚が浸透しているところが、この街の大きな魅力だと私は思います。

更新:2015年4月28日 取材:2015年3月

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