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東急電鉄

「西小山」街がたり 木村雅章さん

私がこの街を好きな理由【連載第6回】

連載「街がたり―私がこの街を好きな理由―」は、東急沿線の街でまちづくりにつながる活動をしている人たちに、それぞれの街の魅力を語ってもらおうという企画。なぜ皆さんがその街を愛し、その街で活動をしているのか。原動力を探りながら、街そのものの魅力を発信していきます。
第6回は、フリーペーパー「24580」の創刊から関わり、カメラを通して地域の人と深くつながるフォトグラファー・木村雅章さんによる、目黒線「西小山」街がたりです。

ちょうど駅のところで目黒区と品川区に分かれる西小山。こちらは品川区側の商店街。

一度暮らすと引っ越しできなくなってしまう街

西小山には、この街のことを愛している人がたくさん住んでいるんです。
私も、そのうちの一人なんですけどね。

撮影助手の仕事に就いたときに西小山で暮らし始めて13年。
引っ越し自体は何度もしているんですけど、いつも西小山。
“引っ越しができない街”なんていう異名もあるんですよ(笑)。
泣く泣く引っ越していったのに、その後も遊びに来る人が結構いて。
ばったり会って「あれ? 引っ越したんじゃなかったっけ?」って聞くと、
「そうだけど行きつけの飲み屋には今も通っているんだよ」みたいな(笑)。

西小山で暮らしている人たちって、
ほかの街から移ってきた人に優しいようにも感じますね。
たまたま知り合った人が、別の人を紹介してくれることがよくある。
そんなふうに、どんどん仲間が増えていくから、
引っ越しができなくなってしまうんです(笑)。

五感を刺激する物事がたくさんある 路地と商店街

西小山の路地は“やばい”ですよ(笑)。
車が入れないような狭くて入り組んだ路地が残っていて、
そこを散歩するのが、気持ちいい。

白いチョークで描かれたケンケンパ。風に揺れる洗濯物。
どこからともなく漂ってくる晩ご飯の匂い。
そんなふうに生活感があるから、ほっとするんですよね。

生活感という意味では、商店街もいいですよ。
魚屋さんや肉屋さんで誰かが買い物をしている様子を見ているだけで、
その日の食卓に並ぶものが目に浮かぶんですよね(笑)。
聞こえてくる会話も温かいですし。
大きなスーパーマーケットでは味わうことはできないでしょうね。

焼き鳥屋とスナックが軒を連ねる路地。木村さんに教えてもらわなければ素通りするところでした。

言葉を超える豊かさがある だから写真で残したい

写真に撮って残したいお店が、西小山にはたくさんあります。
そのひとつが「重盛永信堂」。昭和47年創業のおせんべい屋さんです。

どこかへ行くときの手土産は、いつもここのゼイタク煎餅。
小麦粉と卵と砂糖とハチミツでできた独特のおせんべいは、
甘過ぎず、なんだか懐かしい味がするんです。

奥の座敷でお父さんが座布団に座って、
一枚一枚手焼きしている姿がなんとも言えずカッコいい。
昔ながらの看板とか、ショーケースの感じとか、この空間全体が好きなんです。
言葉で説明しても伝わらないだろうな。
ここには言葉や説明を超える豊かさがあると思います。
そういうのを丸ごと写真に撮って残しておきたいんですよね。

それと僕は、西小山の居酒屋のカウンターが大好きです。
フリーランスになったばかりのころに通い始めた「nabenoren」は、
お気に入りのお店のひとつ。
カウンターにいると、あっという間に知らない方とも仲良くなれちゃうんです。
鉄のカバンを持った発明家。ガハハと笑う拳法道場のおじさん。
いろんな人とここで知り合いました。
さっきの「重盛永信堂」のことも、どこかのカウンターで教えてもらいました。
こうやって仲良くなって、
西小山にまつわる個人的なエピソードを聞くのが楽しいんですよね。

「重盛永信堂 西小山店」の一番人気・ビンズ煎餅は、作るのが追い付かないからと一人3袋までの販売。「毎年暮れに30袋買ってくれる常連さんがいて。10日も通ってくれたよ」とお父さん。
富山出身のご店主が営む「nabenoren」は、白エビのから揚げや大門素麺など、富山にちなんだメニューが豊富。木村さんが体調不良で寝込んだとき、ママさんが薬とお水を家の前に届けてくれたのだそう。

カメラを手に街へ入ることで築けた 深い関係性

フリーペーパー「24580」を作り始めたきっかけも飲みの場でした。
「知り合いがいるから飲もうよ」とバーみたいなところに誘われたんです。
そこにどんどん人が集まってきて、そのうちに
「西小山をテーマにして何か作りたいね」って。

「24580」の撮影を通して、より深く西小山の街に入っていけた気がします。
カメラを手に街へ入っていくことで、また少し違った関係性が築ける。
ただでさえ優しい街なのに、さらにたくさんの人と知り合えて、
さらに興味深い話が聞けるんですよ。

でもね、今回お話したような“西小山の感じ”っていうのも、
ちょっとずつ減ってきているんです。
それを残したいっていう気持ちが強くあります。

実は写真だけじゃなくて、“景色の音”も収集しているんですよ。
夕方の商店街の通りの何気ない音とか。
目を閉じると、景色がわっと浮かぶから。
いつか西小山の写真と音を組み合わせた展覧会をやりたいですね。

“ゼイタク煎餅”の看板が目を引く「重盛永信堂 西小山店」。目黒区側の商店街にあります。

木村 雅章 さん

きむらまさぶみ
瞬間の表情を逃さず切り取った、情感豊かな写真で「とくらく」の商店街写真館ほか、さまざまな媒体で活躍するフォトグラファー。1976年、三重県生まれ。西小山好きの有志によって自費発行されているフリーペーパー「24580」の創刊時からのメンバー。
木村雅章さん
「24580」のメンバーたちと、西小山の建築事務所「m-SITE-r」にて。

撮影:三浦孝明/木村雅章(nabenoren)

更新:2017年3月16日 取材:2017年2~3月

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