「桜新町」街がたり 坂口賢一さん
私がこの街を好きな理由【連載第9回】
私がこの街を好きな理由【連載第9回】
連載「街がたり―私がこの街を好きな理由―」は、東急沿線の街でまちづくりにつながる活動をしている人たちに、それぞれの街の魅力を語ってもらおうという企画。なぜ皆さんがその街を愛し、その街で活動をしているのか。原動力を探りながら、街そのものの魅力を発信していきます。
第9回は、3代続く老舗パン屋さんの店主で、2016年まで6年にわたり桜新町商店街振興組合の理事長を務めた坂口賢一さんによる、田園都市線「桜新町」街がたりです。
ほのぼのとした街。
桜新町を一言で表現すると、そんな感じですかね。
親子3代そろって散策したり買い物を楽しんだり……というのがぴったり。
桜新町の駅は国道246号から一本離れてるんですよね。
だから駅から地上に出ても威圧感のようなものが全然ない。
そういうところも個人的には気に入ってますね。
人懐っこい街だ、という言い方もできるかもしれません。
暮らしてる人はもちろんですが、この街そのものが人懐っこいんですよ。
それから、やっぱり『サザエさん』ですよね。
作者の長谷川町子さんが、ずっと桜新町に住んでらっしゃいましたからね。
銅像やイラストが街のあちこちにあります。
桜新町と『サザエさん』は切っても切れない関係。
それも、ほのぼの感や人懐っこさにつながってる気がします。
駅前通りの八重桜の並木は街の自慢です。
花の色や形がさまざまで満開になると非常にきれいなんですよ。
御衣黄(ギョイコウ)という緑色の花が咲く桜も交じってます。
隣の深沢地区がソメイヨシノの並木なので、あえて桜新町は八重桜にしよう。
そんなふうに、この街をつくった方々が考えたらしいです。
八重桜の満開はソメイヨシノよりも遅い時期なので、
そうすればこの周辺の住民が長いあいだ桜を楽しめるからって。
毎年、春には駅前通りを歩行者天国にして、さくらまつりを開催します。
ちなみに今年2017年は4月16日で、おかげさまで大成功でした。
さくらまつりの前身は盆踊り大会なんですよ。
でもいつしか空き地が減って盆踊りができなくなって……
それで現在のようなお祭りの形になったんです。
ぼくも子供の頃からずっと盆踊りやさくらまつりを楽しんでましたよ。
それなのに、いつの間にか運営する側になっていて不思議な感じがします。
それを思うと、ああ桜新町で育ったんだなって実感しますよね(笑)。
子供の頃の思い出といえば世田谷新町公園。うちの近所にある公園です。
小学生の頃は毎日、学校から帰ってくると、この公園へ遊びに行ってました。
それこそカツオくんのように(笑)。
野球っぽいことをやったり。缶ケリや、いわゆるドロケイをやったり。
日が暮れるまで遊んでましたね。
さっき久々に中に入ったんですよ。
そしたら、なんとなく子供時代よりも小さく感じました……。
自分が大きくなったから、そう感じるんでしょうね。
でもね、そんなふうに遊んでた公園が今も残ってること自体がうれしい。
公園の真ん中に大きなケヤキが3本立ってるんですけど、それは昔のままでした。
そういう意味では、この3本のケヤキも桜新町の象徴のひとつかも。
でも一般的に桜新町の象徴というと、やはり『サザエさん』一家の銅像でしょうね。
2012年の春に完成した桜新町の新たなシンボルです。
つい先ほども前を通りかかったら、ちょうど駅から学生さんが上がってきて。
みんなで銅像の頭をいとおしそうになでてましたけどね(笑)。
そういう感じで親しんでもらえるのはうれしいですよね。
桜新町駅前から長谷川町子美術館までの道が通称サザエさん通り。
1987年に改称されたんで、ちょうど今年で30周年ですね。
通りにあるボラード(車止めのくい)の上や配電盤の外装など、
いろいろなところに『サザエさん』一家のイラストが描かれてて。
いつもではないんですが、商店街のスピーカーから、
アニメ『サザエさん』のBGMや主題歌が流れることもありますし。
初めて桜新町を訪れる方は、それを見たり聴いたりしてテンションが上がるみたいですよ(笑)。
撮影:三浦孝明
更新:2017年6月1日 取材:2017年4月