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東急電鉄

世田谷パン祭り

2015年10月3日(土)~10月4日(日)開催 ―イベントレポート―

「サクッ!」「バリッ!」「フワッ!」――慣れ親しんだ好みのパンから、初めてのパンまで出合える『世田谷パン祭り』が、今年もにぎやかに開催されました。回を重ねるごとに評判を呼び、5回目の今年は、2日間で延べ約2万5千人の来場者が訪れる人気ぶり。マーケットだけでなく、パン作りのワークショップ、シェフのトークショー、ライブなども楽しめる、話題のお祭りです。二日目の様子をお伝えします。

おいしいパンが、笑顔と人の輪をつくる~パンマーケット~

おいしそうなパンが、私たちを迎えてくれました。
パンを買う人の波が絶えないほどのにぎわい。埼玉、神奈川などからも。
「デザインが良くて気に入っています」と、「公式デザインバッグ」をおそろいで持ってパンマーケットに来たカップル。
顔が見える、お話ができるパンマーケット――笑顔がほころびます。

バケット、ベーグル、クロワッサン……お店ごとのこだわり製法からできたパンが見事に顔をそろえて並べられていて、どのパンも魅力的。たくさんの人であふれるマーケット会場の体育館には、東京都内と他県から55店舗が集まりました。遠くは沖縄県からの出店もあり、普段は買いに行けないパンを求めて、開場の2時間前から並んでいた方も。選びきれないほどのパンに出合い、ジャムなども買えるのは、このお祭りならではです。家族連れの方は手分けして、お目当ての店の前に並んでいました。

もう一つのマーケット会場の世田谷公園につながる道には、会場入りの長蛇の列ができていました。入場すると、噴水広場へ向かう小道に“パンの街・世田谷”から16店が横一列に並び、木漏れ日の差し込む中、まるでフランスのマルシェのようで心が弾みます。パンを挟んで、お客さんとお店の人が会話と笑顔を交わす中、次々とパンが売れていきます。その中の一つ「シニフィアン シニフィエ」では、地元昭和女子大学 現代教養学科の学生とコラボで作った、和テイストのリング状のパン「ラ ぺ・トリコロンヌ」を販売していました。内容とコンセプトは学生が担当。戦後70年の今年、“平和の輪(和)”にかけて作られました。完成までの意見交換で、学生と店の交流が深められたそうです。パンでつながる“地域の輪”でもあるのですね。

きんぴら、ひじき、角煮といった和総菜名が目を引くのは、このお祭りに第1回目から参加している「小麦と酵母 濱田家」。専務の吉田貫さんは、毎年、祭りへの出店の声が掛かると、「世田谷のパン屋として、もちろん出ます」と答えているそうです。意気揚々のお話しぶりに、地域のパン屋としての心意気を感じました。その他お店ごとに趣向を凝らした、サックリ感のパン、スイーツ感覚のパン……などがずらりと並び、1人で何個も買っていく来場者が多かったようです。青空の下、パンを囲んでいくつも輪ができていました。

「三宿三色パン」は3つのキーワードで極める

表彰式の様子。「ル・コルドン・ブルー / ラ・ブティック」は、シェフとスタッフ一同で受賞を喜んでいました。
グランプリは「ル・コルドン・ブルー / ラ・ブティック」の「三つ味&三つ編みブリオッシュ」。
コンセプト&グッドルッキング賞は「ブーランジュリー・オーヴェルニュ」の「カラフルムーン」。
テイスト賞は「ブレッド&タパス沢村」の「和み三色パン」。

開催エリアにある三宿の“3”にちなんで、オリジナル3色パンを競う「三宿三色パンコンテスト」の発表会場にやってきました。今年は13店舗がエントリー。お客様からの当日投票と一般審査員、および5人の専門審査員の稲垣智子さん(一般社団法人 日本パンコーディネーター協会代表)、ひのようこさん(こんがりパンだパンクラブ理事長)、池田浩明さん(パンラボ主宰)他で審査されました。審査基準は、作品のコンセプト、グッドルッキング(外観)、テイスティング(味)の3項目です。どの店舗からも、こだわりのパン生地に選び抜いた素材で工夫した、個性あふれるパンが出品されていました。

グランプリに輝いたのは、代官山「ル・コルドン・ブルー / ラ・ブティック」の「三つ味&三つ編みブリオッシュ」でした。普段、店では素材に使うことのない抹茶の他、マロン、小豆、ひよこ豆を使った作品は、「高級感のある秋の色遣いと味わいで、世田谷らしいパン」と、審査員の高い評価を得ての受賞でした。また、コンセプト&グッドルッキング賞は、葛飾区「ブーランジュリー・オーヴェルニュ」の「カラフルムーン」が獲得しました。オーナーシェフの井上克也さんは、さまざまなパンコンテストの受賞歴がありますが、「この賞は、ぜひ受賞したかった」とうれしそうに話してくれました。審査員の能城政隆さんは、第一印象で「あ、すてきだな! 緑あふれる三宿にマッチしている」と感じたそうです。そしてテイスト賞に選ばれたのは、軽井沢にある「ブレッド&タパス沢村」の「和み三色パン」。この店の広報担当の岩田さんは、「味を認められることは、ベーカリーとっては喜ばしいことです」と語ってくれました。

このお祭りのために作られた、オリジナル3色パン。惜しくも賞を逃した他の作品も、アイデアとシェフの思いが詰まった作品ばかりで、買い求める人が二重三重となり、その人気ぶりが感じられました。このコンテストで、パンは「五感で楽しむ」ことを発見できました。

パンを頭と手で楽しむ~世田谷パン大学~

広い知識とユーモアの混じった“博士”の講義に、参加者も引き込まれていました。
普段からパン作りを楽しむという親子が参加。今日は、マニュエル・ローベルさんの手ほどきを受けて、特別な時間です。
トークショーを終えても、まだ話が尽きない様子のシェフたち。仲の良さが垣間見える笑顔です。

パンについての学びと体験ができるように「世田谷パン大学」と称して、ワークショップとトークショーが多数開催されていました。IID 世田谷ものづくり学校のスタジオで、「“博士”と呼んでください。年齢は500歳……」と自己紹介するのは、講師の「株式会社patis」代表取締役の鈴木博士さん。「原宿食大学」とのワークショップ「味覚のレッスン!」を開講し、チーズやバターの生い立ち、選び方、歴史や地理上の裏話など、ユーモアたっぷりのレクチャーです。さまざまな種類のチーズやバター、塩の食べ比べもできて、友人同士で参加していた女性は、「こんなに深い話が聞けるとは思わなかった」と、とても満足げな様子でした。

世田谷公園の会場では、「ル・コルドン・ブルー 東京校」による「ファソナージュ(成形)を体験!」が開講されていました。講師のマニュエル・ローベルさんの指導で、パン作りの基本である成形(折る・切る・切り込み)が体験できます。フランス語による丁寧な指導は、参加者をフランス校の生徒になった気分にさせてくれたようです。子どもが出来上がった形をうれしそうに講師に見せる、ほほ笑ましい場面もありました。プロの技に触れられた体験は、きっと子どもたちの記憶に残るでしょう。  

注目の「世田谷区の人気ブーランジェリーとパティスリーによるトークセッション」は、IID 世田谷ものづくり学校のギャラリーで行われました。「Boulangerie-Sudo」の須藤秀男シェフと「Patisserie Yu Sasage」の捧雄介シェフ、そして「Ryoura」の菅又亮輔シェフの、世田谷を代表する3人という豪華な顔ぶれです。同世代の3人は、日頃から情報交換をしたり腕を磨き合う仲間。「よく飲みに行っては、8割くだらない話をして、2割真面目な話をします」と菅又シェフ。「門外不出のレシピではなく、わからないことは聞き、聞かれたら答えて、お互い良いものを作ろう! そんな雰囲気なんです」と語るのは捧シェフ。仲の良い“普段着のシェフたち”の様子と、真剣な表情でパンやお菓子への思いを語る様子が、身近に感じられたトークセッションでした。

パンも街も、「情熱とつながり」でつくられる

ハンカチ店「H TOKYO」では、パン祭りにまつわる商品を販売していました。パンモチーフハンカチでピクニックへ出かけたくなります。
「ほぼ日刊イトイ新聞」と「onkä」とのコラボパン。「生アンズを一度オーブンドライして、一晩寝かせた後で煮る」という、糸井さん考案の手の込んだジャムを使用。10分で40個完売の人気ぶりでした。
焼きたてパンの香りがしてきそうな表紙の、公式パンMAP。パンの価格に合わせて、手ごろな300円(税込)で販売。

『世田谷パン祭り』は、三宿でハンカチ店「H TOKYO」を営む、間中伸也さんの発案で始まりました。間中さんは、近所の人とあいさつを交わす中で、「もっとお互いにつながり、盛り上がっていきたい」と考えるようになり、「三宿四二〇商店会」を2009年に発足させました。そして、商店会会長として組織をつくるだけでなく、「地域と商店会が協力し合えるようなコンテンツをつくっていきたい」と考え企画したのが、この『世田谷パン祭り』です。

人気の高まりとともに魅力的なコラボレーションも生まれました。コピーライター・糸井重里さん主催のウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」と、世田谷区のベーカリー「onkä」とでパンが作られ販売。糸井さん考案の「おらがジャム」を巻き込んだ小ぶりなパンは、話題を呼びました。また、シティカルチャーガイド「TOmagazine」と世田谷パン祭り実行委員会のコラボで公式MAPを作成。縦長の折り込み型で、中を開くと「今、いくべき世田谷区のパン屋48軒!」がMAPに掲載され、裏面は「『ニューウェイヴ系パン』とは」「大人のオープンサンド」の作り方など奥深い地元ネタが書かれていて、つい手に取りたくなります。コラボの広がりが、パン祭りの楽しみ方の幅も広げているようでした。

――「世田谷パン祭りを“地元のお祭り”にしたい」と間中さんは言います。それには、地域の人とお店との親和性や、このイベントが地域の人に快く受け入れてもらうことが大事だと考え、工夫を生み出しました。一つは、イベント2週間前から始まるスタンプラリー。「三宿四二〇商店会」の加盟店舗で、購入や飲食をするとスタンプを押してもらえ、条件を満たすと、公式デザインバッグ&クーポン券や、パンマーケットプライオリティパスが先着でもらえるというものです。こうすることで、イベント前から楽しみが膨らみ、来店してくるお客さんが増えてきたようです。また当日は、開場1時間前に地域の人たち向けの「優先入場時間」を設定。地元が期待する“お祭り”になってきているようです。間中さんの「地域のため、パン屋さんのため」という情熱が、「来年はより良くしていこう」という “前向きなエネルギー”を三宿に生み出したイベントでした。

文:Loco共感編集部(福岡尚夏・森田由紀・山本弥和・衣笠可奈子)

更新:2015年12月10日 取材:2015年10月4日

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