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おおた区民大学地域学講座「久が原、その魅力~25,000年前からの軌跡と奇跡」

2016年10月7日(金)~11月11日(金)開催 -イベントレポート-

大田区主催の「地域学」講座は、区内のさまざまな「まち」を題材に、2008年から開催されています。今回取り上げるのは久が原。25,000年前、旧石器時代から人が居住し続けてきたこの地の歴史をひもといて、地域の新たな魅力を発見し、次世代につなぐことを目指すこの講座を、フィールドワークを軸にレポートします。

イベント名 おおた区民大学地域学講座「久が原、その魅力~25,000年前からの軌跡と奇跡」
開催 2016年10月7日(金)~11月11日(金)
場所 久が原特別出張所 ほか
最寄駅

どんな街にも歴史があり、住む人の数だけ思い出があります

本光寺の「湧水」。今でも市民消防隊のポンプ訓練に使われる生きた湧き水です。
日本有数の遺跡の上に立つ久原小学校は、学校としての歴史も100年以上。昔は「きゅうげん」と呼んでいたとか。
久原小学校の同窓生同士とわかって思い出話も尽きません。
クロスクラブの広々とした庭で「ふりかえりノート」を書く参加者。久が原の文化的な豊かさを感じる空間です。
今も大切にされている庚申塚。数年前、屋根の修理費をクラウドファンディングで募ったそうです。そのときは達成に至りませんでしたが、街の歴史的資産を守ろうという先進的な挑戦でした。

現在の久が原は、新幹線・池上線・第二京浜・呑川に囲まれたエリアです。「久が原に残されたものを知ることで、ここに残したいものが見えてくる」というこの講座には、地元について学ぶことへの関心の高さを示すように、30名の定員を上回る応募がありました。抽選で選ばれた受講者の多くは、近隣に在住の60代以上の方たち。25,000年という歴史ロマンに魅力を感じて、糀谷や大森など大田区の他の地域から参加した人もいます。

全6回を共に学ぶ仲間として、最初に自己紹介が行われました。その中で何度も出てきた印象的な単語が「洗い場」。水質良好なこの地域に昭和35年頃まで数カ所存在していた、野菜などを洗うための水場のことです。住民のコミュニケーションの場や子どもの遊び場として、皆さんにはとても身近で思い出深いものだったようです。遺跡や貝塚のことに触れる人も多く、誰かが語る思い出話を大きくうなずきながら聴いている参加者。生まれてからずっと久が原、とか、仕事や結婚で一度離れたけれどまた戻ってきて久が原、という人が多いことには驚かされます。

初日は、久が原図書館館長の森本文彦さんが、今回の講座の参考になりそうな書籍を紹介しました。久が原の歴史にも触れ、土地の区分や地名の変遷など、地元の方でもなかなか知る機会がないお話を伺いました。第2回は、郷土博物館学芸員の山本たか子さんと、地元住民の小原洪一さんと冨田稔さんが、「洗い場」や湧水について解説。久が原ではかつて天然氷も作られていたそうです。参加者も思い出に花が咲き、戦時中の池上本門寺辺りがどんな様子だったかという話も飛び出しました。街の財産として、こうした話も次世代に残すことの大切さを感じます。第3回は、東京国立博物館の主任研究員・古谷毅さんが専門家の立場から久が原が誇る古代遺跡について解説。考古学的な話題は参加者の関心も高く、「歴史の中にいることに感無量でした」との感想も聞かれました。

この講座では、参加者が各自「ふりかえりノート」にその日の感想などを書いて毎回提出することになっています。それを元に、スタッフが講義のまとめや参加者の感想を「くがはら通信」としてプリントして全員に共有するのも、講座に深みをプラスする有意義な取り組みです。

第4回では、再び小原さんが登壇、本光寺の宮田さん、東部八幡神社の大竹さんと共に、久が原周辺の寺社の歴史や「題目講」について解説しました。「講」は、講中(講のメンバー)が各家持ち回りで定期的に集い、みんなで念仏を唱えるという風習。今も一部で守られているそうです。連綿と続いてきた人の営みに感心させられる一方、時代の事情に則したコミュニティのあり方についても考えさせられる回でした。

第5回は、この講座のメインイベント、これまでの講義に登場した場所を歩いて実感するフィールドワークです。東部八幡神社を出発し、本光寺の水行の場(普段は非公開)や湧水を見学、古代の遺跡の上に立つ久原小学校など、講義で幾度となく話題になった場所を実際に訪ねました。

実はこのフィールドワークのもうひとつのテーマは、「人が集ってきた新旧の場所を巡る」ということ。古きを訪ねるだけでなく、新しい集いの場所も紹介されます。 出発前には、「ママカフェ久が原」の活動についての説明がありました。赤ちゃんとふれあいたいお年寄りの方もどうぞいらしてください、とのこと。また途中に立ち寄った「ふれあいサロン虹の部屋」は、高齢者を対象に「家にこもらないで知り合いを作ろう」とボランティアベースで運営されている気さくでウエルカムな雰囲気の集いの場。最後に訪れた「クロスクラブ」は、建築家・山口文象氏の自宅。サロンコンサートや雑誌の撮影などに使われるだけでなく、人々が交わる場所として親しまれています。名前のとおり、人が“クロスする”場所として愛されているこの邸宅について、ご子息の勝敏さんは「ここにいらっしゃる方が空気を作ってくれている場所なんですよ」と、にこやかに話してくださいました。建物として見学もできます(無料・要予約)。どの場所にも、久が原という街の懐の深さを感じます。

最終回は、株式会社 まちづくりカンパニー・シープネットワークの大沼敏夫さんから「くがはら」の地名の由来や日本の村落共同体のイメージなどについて聞いたあと、グループに分かれて今回の講座の感想などを語り合いました。講座はこの日で終わりでしたが、予備日となっていた翌週にも参加者が集まって話の続きをしたそうです。

各分野の専門家の話を聞いて学び、参加者自らが街の思い出を語り出す様子はとても生き生きしていました。街の記憶を共有することは、街への愛着を育て、ひいては街のためにアクションを起こすモチベーションともなります。参加者からは、こうした学びを継続したいという声も聞かれました。この講座が目指した「奇跡」の種が、その思いの中に生まれているのかもしれません。

更新:2016年12月8日 取材:2016年10月・11月

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