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東急電鉄

ポートランドと世田谷をつなぐ暮らしやすさへの都市戦略 ―世田谷ポートランド都市文化交流協会準備会キックオフシンポジウム―

2017年7月13日(木)開催 ―イベントレポート―

アメリカ西海岸北西部に位置し、「全米一暮らしやすいまち」として知られているオレゴン州ポートランド。緑と環境を重視した都市づくりや、古い倉庫・ビル群のリノベーション、新しいライフスタイルの発信などにより、世界中から注目を集めています。そんなポートランドの都市文化に魅了された有志たちが、世田谷区とポートランドの交流をより一層深めようと集まったのが「世田谷ポートランド都市文化交流協会準備会」です。ポートランド日本庭園の54年ぶりのリニューアルオープンを記念して開催された、キックオフシンポジウムの様子をレポートします。

イベント名 世田谷ポートランド都市文化交流協会準備会キックオフシンポジウム
開催 2017年7月13日(木)
場所 東京都市大学二子玉川夢キャンパス
最寄駅

ポートランドの魅力を知り、世田谷の未来を考える会

ポートランド日本庭園はポートランド市において最も観光客が集まる場所であり、経済的な効果も非常に高い、とスティーブン・D・ブルーム氏。
後半のパネルディスカッションは、世田谷区長・保坂氏の進行により進められました。交流協会準備会は、もともと保坂区長の呼びかけによって集まった有志により結成されています。
会長の涌井氏(左)と隈氏。涌井氏は、日本庭園リニューアルを巡る背景のひとつとして、「ポートランドは戦後日本向けの北米材の輸出基地の一つであったが、次々木を切ることへの自戒の念もあり、日本庭園周辺の針葉樹林を元の森に戻そうとしている」ことを挙げました。
パネルディスカッションの最後には小林氏から、「世田谷区には大学が多い。大学を絡めて、ゆるくおもしろく、長く文化交流を続けていければと」という今後の方向性を示唆する発言も。
当日は登壇したメンバーのほかにも会の関係者が来場しており、一人ずつ紹介される一コマも。写真は、ポートランドで市民レベルのさまざまな活動に取り組む黒崎氏。

会の代表である涌井史郎氏(東京都市大学特別教授)によるキーノートスピーチで、シンポジウムは幕を開けました。涌井氏は、世田谷区がポートランドと交流を深めるべき理由として、グリーンインフラを重視した自然と共生するまちづくりや、徹底的に人の視点に立った交通施策など、多くの人を引き付けてやまないポートランドの魅力を紹介。世田谷区に“幸福感を尺度としたまちづくり”を期待する、と語りました。

続いてスティーブン・D・ブルーム氏が登壇。ブルーム氏は、2005年にアメリカ最大級といわれるポートランド日本庭園のCEOに就任し、日本文化の普及に尽力しています。講演はポートランド日本庭園の歴史や背景を中心に展開。市の公園内につくられたポートランド日本庭園が、開園当初から非営利団体によって独立運営され、さまざまなリソースを市民が持ち寄ることで成功したことや、今回のリニューアルに際して、約37億円(約3350万ドル)もの資金を、政府から得るのではなく民間から調達したという話は、参加者の大きな関心を集めていました。

次に登壇したのは建築家の隈研吾氏です。隈氏は6年前、資金集め(ファンドレイジング)の段階から、ポートランド日本庭園リニューアルプロジェクトに設計者として参加。ポートランドに通い、多くの時間を現地の人たちとお酒を酌み交わすことに費やしたそうです。会場の笑いを誘っていたエピソードですが、「実はこれがファンドレイジングなのです」と隈氏。庭園の魅力やアイデアについて語り合いながら信頼関係を築き、資金集めにつなげていったと話しました。

後半のパネルディスカッションでは、前半登壇した涌井氏、ブルーム氏、隈氏に、世田谷区長の保坂展人氏、小林正美氏(明治大学理工学部副学長)、東浦亮典氏(東急電鉄)が加わり、ポートランドと世田谷の関係性について議論を深めました。

口火を切った小林氏は、ポートランドのまちづくりで重要なのは、過度な都市再生を仕掛けなかったこと、「都市成長限界線(UGB)」を決めて開発したことなど、都市の成長をコントロールしたことだとコメント。さらに、これからの交流で「世田谷は何を発信できるか」を考えるときに、ポートランドでさまざまな市民活動をしている日本人のキーマンにも着目すべきだと提言しました。
涌井氏は、ポートランドはヒッピー文化をもとに、「ゆるい」「スロー」「カルティベイト(深める)」という3つの段階を経て「フリー」な今に至ると解説。「これを実現するには“個”が確立している必要があるが、われわれにはそれがまだできていない」とコメントしました。
続いて隈氏は、建物を設計する際のポートランドと日本の意識の違いを紹介。日本と異なり、アメリカでは、建築の環境基準の最高認証を取ることを熱望されるといいます。一方で、日本は高い環境技術を持つことにも触れ、そうした技術を、交流を進める中で、共に世界に発信していければとも発言していました。

進行役の保坂世田谷区長は、日本庭園のリニューアルをはじめポートランドで日本文化をめぐる動きが活性化しているので、そのことをぜひ多くの人に知ってほしいとコメント。またポートランドが長い時間をかけて街をつくり変えてきたことに触れ、「いろいろな挑戦をしなければならないと励まされている気がする」と語りました。
東急電鉄の東浦氏は、世田谷区の二子玉川を取り巻く環境がポートランドと似ていると指摘。世田谷区とポートランドを比較しながら、「市民のまちづくり意識と関与」など、世田谷区が学ぶべきポイントを8つにまとめて説明しました。

シンポジウムの最後には、参加者から質問を受けるコーナーも。印象的だったのが、「日本庭園リニューアルの資金集めを成功に導いた秘訣は?」という質問です。答えの中でブルーム氏は、資金調達で最も大事なのは「考え方を共有すること」と説明。また隈氏の飲み会のエピソードに触れ、「そうしたことも資金調達のためには必要で、信頼を得るために欠かせない手段」と解説しました。また、シンポジウムの観衆に向け、自分の心を見つめ直し、取り組みへの貢献を“自分事”として捉える大切さを訴えて、会場の強い関心を引いていました。

現在、会は「準備会」の段階。これからさまざまな立場の人に議論に参加してもらい、活動を具体化していくとのこと。シンポジウム後には、会に興味を持った人と親交を深めるレセプション(歓迎会)も開催されました。ポートランドと世田谷の交流を進める中で、どのような活動が企画され実施されていくのか、今後への期待が大きく膨らむイベントでした。

文と写真:庄司健一

更新:2017年8月18日 取材:2017年7月13日

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