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東急電鉄

東急沿線イベント体験レポート おおたオープンファクトリー2014 2014年2月15日(土) 場所:東京都大田区 最寄駅:下丸子/武蔵新田

モノづくりのまち ~大田オープンファクトリー~

駅前の案内所は学生たちの担当。イベントの楽しみ方の相談にものってもらえます。
各会場への道には、イベント気分をかきたてるノボリ。

下町ボブスレーの開発で新たな注目を浴びている大田区の町工場。「下町ロケット」やNHK「梅ちゃん先生」など小説やドラマに、戦後モノづくりを支えた現場として登場することもしばしばです。

そんな大田区の町工場にスポットを当てる『おおたオープンファクトリー』は、“モノづくりのまち”の魅力を伝え、ますます活力のあるまちづくりにつなげようと、地域の工業組合と観光協会、そして大学(首都大×横浜国大×東大)が連携して行うイベント。普段見ることのできない工場見学あり、トークイベントあり、ワークショップありと楽しい企画が盛りだくさんです。

2014年2月15日。東京で45年ぶりの積雪量を記録した翌日に、第3回目が実施されました。足元が悪い中にもかかわらず、多くの人でにぎわったイベントの様子をお伝えします。

モノづくりの現場を体感 ~工場見学~

アイデアマンの白石社長。
斬新! 金魚鉢を置くスペースがなくても金魚が飼えます。

『おおたオープンファクトリー』の見どころはさまざまあれど、メインイベントといえば工場見学ができることでしょう! 大田の誇るモノづくりの現場を体感できる貴重な機会です。今回見学できるのは、プラスチックや金属加工を行う会社、印刷や刻印を手がける会社など、計17工場。その中から『ホワイト・テクニカ』と『伊和起ゲージ』を見学させていただきました。

はじめに訪れた『ホワイト・テクニカ』では、白石社長がにこやかに迎えてくれました。

「精密機器の部品の金属加工のほか、アイデアを生かした製品を生み出しています。例えばこのアクアドームね」と白石社長。なるほど飾ってある半球の壁掛けを見ると、中で金魚が気持ち良さそうに泳いでいるではないですか。被災地支援グッズである「土のうスタンド」も、近隣工場仲間の協力を得てここから生まれました。

ぐるりと見回しても、何の工場か見当がつかないものばかり。限られたスペースに工作機器や部品がぎっしりと配置されています。ドットを開けたり、曲線にカットしたり、磨いたり……。社長の手さばきを見ていると、工作好きならずとも何だかワクワク。作業場は、ちょっと手を伸ばすだけで次々と作業ができるように、いろいろな工夫が凝らされていました。 アイデアマンである社長は思い付いたことを即その場で実現できるようにと、効率のよい動線にものを配置して作業をしているとのこと。アイデアを生かすのは製品だけではないのですね。

匠の技と最新技術のコラボ ~工場見学~

これがボールねじ。シャフトとナットの間に入っているボールが回転、循環することでナットが滑らかに動きます。
ナットの加工作業。
いろいろな形状のナットたち。

もうひとつの『伊和起ゲージ』は「ボールねじ」の生産を行っている、大田区唯一の工場です。広瀬社長とお二人の社員の方に製品や工場内の説明をしていただきました。

「ボールねじ」は自動ドアや車いす、ロボットの関節などに使われている部品で、いわば物をスムーズに動かす仕組みの肝になる部分。軸であるシャフト、ナット、そしてその中に入っているボールで成り立っています。滑らか、かつ精密に動くためには高い技術が必要なものです。

NC旋盤という機械で、金属の棒に溝を付けてシャフトを作るところから見学していきます。油と水の混ざった液体をかけながら少しずつ削っていきますが、これは摩擦による熱が出ないように、そして削りやすくするため。溝幅にもよりますが、30センチ弱のシャフトを約5分かけて削り出します。

次に見学したのはナットづくりの現場。ナットの加工は職人さんの手による繊細な作業も多く、技術が問われる大事な工程です。クライアントの要望通りの複雑な形に成形、研磨していく姿は、見ているこちらが思わず息を詰めてしまうほどの緊張感がありました。

機械で行う部分と職人さんたちの技で行う部分。それぞれの工程に応じて分業され、さらに作業データの蓄積、活用によってより精度の高いものが完成されていくとのこと。熟練の技と最新技術の融合によって、高品質な製品が生み出されているということを実感しました。

職人が1年で1番しゃべる日 ~モノ・ワザ・トーク~

職人魂がストレートに伝わる話の連続で時間が足りないほど。
大田の高い技術力について語るプレシジョンファクトリーの平本社長。

イベントプログラムのひとつ『職人が1年で1番しゃべる日~モノ・ワザ・トーク~』は、普段無口な職人さんに思いきりしゃべってもらおうと、主催者である学生たちが考えた企画。午前に行われた若い職人さんたちの回に続き、午後はベテランの職人さんの登場です。

赤いつなぎを着た学生さんの司会でトークセッションがスタート。まずはパネリストの皆さんによる、それぞれの事業内容の紹介から。「ものづくり企業としてどのような方向に進んでいきたいか」「学生が企画したこのイベントを続けている原動力は何か」など、興味深い話が繰り広げられていきます。職人さんは無口……というイメージがあっという間に払拭されるほど、熱いトークの連続です。

「一番大事にしているものは?」という質問には、皆さん異口同音に「従業員」という答え。同じ機械を使っても、感性が異なるとモノづくりは成立していかないとか。それをどう伝承していくかが悩みのようです。どんなに機械化されていても、やはりそれを使う“人”が大切なのだと改めて実感しました。

ロケット部品に代表される、多品種小ロットにも対応、オーダーには絶対無理と言わないという『北嶋絞製作所』の北嶋さん。検査技術を磨いて、より精度の高いものをつくることを目指す『栄商金属株式会社』の佐山さん。自分の会社だけで完結するのではなく、仲間との連携によるモノづくりを実現していく『プレシジョンファクトリー』の平本さん。業務用ベーカリーとして中国での展開実績も積んでいる『東山堂ベーカリー』の原田さん。いずれの方のお話からも、経験に裏付けされた誇りと、新しいモノづくりへの気概を感じるトークセッションでした。 

これも大田区で作られていたとは! ~モノ・ワザギャラリー~

大阪の府立高校の先生と技術者のご夫妻。それぞれの視点から興味深いイベントとのこと。
『モノづくりたまご』は大人にとっても魅力的なものばかり。
全部手作業で作っている精巧な作りのアイテムたち。

まるで本物にしか見えないトマトの食品サンプル、アルミのおしゃれなiPhoneケース、子どもたちに大人気「こびとづかん」のソフトビニール人形、おしゃれなアロマディフューザー……。

『モノ・ワザ・トーク』が行われた『モノ・ワザ ラウンジ』には、町工場自慢の“モノ”と“ワザ”を間近に見られるコーナーが設けられていました。

製品についての説明パネルも展示され、担当の方から説明を受けることもできます。来場者たちはそれぞれ興味のあるブースに立ち止まり、じっくりと説明を読んだり、担当の方と話をしたり。

ひとつひとつ熱心に見学している女性にお話を伺うと、大阪府立高校の教師の方でした。「モノづくりについて授業で生徒にリアルな話をしたいと思い、東京勤務の夫と一緒に来ました。職業選択の指導においても参考になります」とのこと。メーカーの技術者であるご主人は「工場や機械が動いているのを見るのが好きなんです」と楽しそうに話されていました。

もうひとつ、このイベントで忘れてはならないのが『モノづくりたまご』。これは職人さんの技を駆使したグッズが入っている、いわゆる“ガチャガチャ”。1回300円ですが、職人さんの作品だけに100倍以上の価値があるものも入っているとか。洗練されたデザインと匠の技のコラボで、キラリと光るアイテムぞろい。毎回大人気で売り切れ必至なのもうなずけます。ここでしか手に入らない貴重なお土産となりそうです。

「廃材」ならぬ「配財」でハンコづくり ~くりらぼワークショップ~

子どもでも大人でも、それぞれのクオリティーで楽しめるのが「配財」のハンコづくり。
ペンギンやお花など、捨てるはずのモノから、こんな作品が出来上がります。
工作物を削ったり、切ったりする「旋盤」。昭和27年から長く実際に使用されていました。

「モノづくりのまちづくり」を推進するための交流拠点『くりらぼ多摩川』では、ペーパークラフトで「下町ボブスレー」をデザインしたり、工場から出る廃材を使ってスタンプをつくったりする、ワークショップが催されました。

ここ『くりらぼ多摩川』はかつての町工場を改修して作ったワーキングスペース。大田クリエイティブタウン構想のひとつ、「町工場を魅力的は不動産として捉える“工場町家”」の取り組みの成果といえるステキな空間です。中には「梅ちゃん先生」の撮影に使われた汎用旋盤などの機械も展示されています。

そんなモノづくりの“気”に満ちたスペースでは、小さな子どもから大人までが集って、自由に切れるウレタンを使ってのハンコづくりに挑戦していました。このワークショップは、工場から出る「廃材」を「配財」として活用していこうという墨田区の団体とのコラボレーションです。

大きなテーブルを囲んで座った参加者たちは、先生の説明に耳を傾けながら、ちょっと緊張気味に制作をスタート。作りたいものの形にカットしたウレタンを台に貼り付けていきます。いろいろなスタンプができていくにつれて、場の空気が和気あいあいとしたものに変化。初めてのワークショップ体験中の男の子は、「どんどん形ができていくところが楽しい」と夢中になって手を動かしていました。

ご紹介したプログラムのほか、各種ガイドツアーや新田神社での屋台広場なども企画されていましたが、今回は雪のため中止となったのが残念でした。とはいえ、回りきれないほど充実度満点のこのイベント。下丸子、武蔵新田駅周辺の“モノづくり”と“まちづくり”のシナジーに、大きな息吹を感じた1日でした。

更新:2014年4月22日 取材:2014年2月15日

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