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東急電鉄

東急沿線イベント体験レポート AOBA+ART2014 リビング・アーカイヴ展―作品と暮らす街― 2014/9/20~10/5 at たまプラーザ駅周辺・遊歩道・美しが丘住宅街 ほか

美しが丘の住宅街に いつもと違う“何か”が出現!

たまプラーザの街並みを再現した模型に、足を止める親子。「もういいんじゃない?」とお母さんに言われても、子どもたちの興味は尽きません。
「おうち見つかった?」。子どもたちと一緒に楽しんでいる、イーハンスタジオの岸本泰之さん。
実際に制作したアーティストが作品ガイドを行うことも。この日はメインプロジェクトを手掛けた谷山恭子さん(右)が参加。

夏が過ぎ去り、涼しい風が吹きはじめた9月。たまプラーザは、恒例となったアートイベントの季節。たまプラーザ駅の周辺エリアや美しが丘の住宅街に「あれ、何コレ?」と思うような、いつもと違う何かが出現する『AOBA+ART』が9月20日に開幕しました。

『リビング・アーカイヴ展』と名付けられた『AOBA+ART 2014』は、“作品と暮らす街”がテーマ。7年目を迎える今年は、新しい作品と一緒に、街の中に残る過去の作品も楽しめるのが特徴です。約2週間続くイベントの初日、お散歩しながら街の中に設置された作品の解説をしてくれる「お散歩ガイドツアー」に早速参加してきました。

ツアーの集合場所になっている、駅北口に設置されたインフォメーションセンターのテントでは、開催初日ながら、早くも子どもたちが集まり興味津々。「一体何が?」とテントの中をのぞくと「自分のおうちを見つけてみませんか?」の声。なるほど、たまプラーザ駅から美しが丘3丁目までの街並みを再現した模型があり、自分の家を探して色を塗るという体験型アートイベントが始まっていました。 模型を制作した建築ユニット・イーハンスタジオの岸本泰之さんと櫻井嘉八さんが手渡したカラースタンプで、子どもたちが楽しそうに色を付けています。「この作品、最後にはどうなるんですか?」と尋ねると、「わかりません。自由に色を付けてもらってどうなるのか、実は僕自身もワクワクしています」と岸本さん。そんな変化していく様子も作品の一部として楽しんでしまうんですね。

スタンプに夢中の子どもたちの様子を眺めながら過ごしていると、「お散歩ガイドツアー」に参加する人たちが集まりはじめました。事前の予約不要で費用も無料。この気軽さが美術館アートとの違いでしょうか。アートが街の中に溶け込み、住民の生活の一部として根付いている雰囲気がすてきです。

スタッフの海老澤彩さんが簡単にツアー内容を説明し、スマホを持っている人は、住民の方が手掛けたAR(拡張現実)マップを見るために、無料アプリ「junaio」をインストール。目の前の風景にスマホをかざせば、今はもうない過去の展示作品を見ることができ、地域住民のインタビュー冊子「街のはなし」を音声で聞くことができるんだとか。アプリをインストールしたら、コースマップを手に、さあ出発!

緯度と経度で「自分は、いまここにいる」を実感

いつもの方位盤が不思議な作品に! 「変な気分」と参加者みんなが口をそろえます。
季節外れのサツキの花は、緯度経度の座標がプリントされたピンクのリボン。

海老澤さんに先導され、どんな作品に出合えるのかワクワクしながら最初の作品へ。東急百貨店2階の踊り場にある方位盤に、カラフルな数字のプリントが……。この緯度経度の座標をテーマにした作品は、谷山恭子さん作「Lat/Long Project」という今年のメインプロジェクト。「中心に立ってぐるぐる回ると、不思議な気分がしますよ」とガイドも務めている谷山さんに勧められ、円の真ん中へ。あれれ、ホントに不思議な気分!?

谷山さんの作品は“所在”がキーワード。東日本大震災後に1カ月間ほど災害ボランティアに参加した際、何も無くなってしまった石巻の街の姿に出合い、緯度と経度だけが自分の居場所を示してくれると感じたのだそう。「広い地球の中で、“自分がここにいる”という実感を作品から感じてほしい」と話します。お父さんの仕事の関係でボルネオ島のマレーシア領で生まれ、幼少期をボルネオ島で過ごしたという谷山さん。海外で生まれ、今は日本に住んでいるという、そんな環境も作品に影響しているのかもしれません。

季節外れのサツキの花が咲いているように見えた遊歩道沿いの生け垣。よく見ると花ではなく、濃淡のピンクのリボンが枝に結びつけられていました。色の濃いリボンには緯度経度の座標、色の薄いリボンには“I’m here”の文字。まるで「私はいま、ここにいるよ」と花に話し掛けられているようです。

アーティストの創造性を超える子どもたち

「KALEIDOSCAPE」を両側からのぞき込む子どもたち。一体何が見えているんでしょう?
カラフルな街の屋根をイメージした作品「空とある風景」。

たまプラーザの街の特徴のひとつに、歩行者の安全や快適さを優先した道路設計があるそう。広々とした遊歩道は車の危険を感じることがなく、作品を見ながらのんびり歩くには最適。子どもたちが作品を見つけては走って行きます。

井口雄介さん作の「KALEIDOSCAPE」は、日常の風景を作品の中に取り込んで、風景も作品化してしまおうという万華鏡型作品。ぐるぐると回して見ることで、日常の風景が混じり合い変化して見えます。一緒にツアーに参加している子どもたちが、両側から一緒にのぞいてみたり、時には万華鏡作品にぶら下がってみたりと、アート作品を公園の遊具のように楽しんでいます。自由な発想は、もはやアーティストを超えている?

その横の公園の金網には、色紙のようなものが一見無造作に張り付けられていました。杉浦藍さんの作品「空とある風景」は、見慣れた日常の今を切り取り、色彩と形を通して作品化したものだそう。街の家並みの屋根をイメージしているんですね。

作品が点在する遊歩道エリア

公園のベンチに置かれたクッションも作品のひとつ。
座標点が描かれたすべり台。末尾の数字“00”は、ここが特別な場所だという印。

たまプラーザ団地のドーナツ公園周辺では、作品が連続して登場します。

ベンチに置かれたクッションは、インタビュー冊子「街のはなし」と連動した谷山さんの作品。本の一部として、クッションに写真がプリントされています。2段になった万華鏡は、天体観測などに使用された“六分儀(ろくぶんぎ)”をイメージした井口さんの作品。周囲の景色にも馴染んで、まるでずっとここにあったみたい。

振り返ると公園の木に大小の鏡が取り付けられた不思議な作品も。よく見ると緯度経度の座標がプリントされています。自分が鏡の真ん中に写る場所が、プリントされた緯度経度の座標点なんだそう。

子どもたちの走っていく後を追うように向かった先にある滑り台は、ピンクにお色直しされ、上ってみると緯度経度の座標が……。末尾の数字が“00”でそろっていることで、この場所が何だか特別な場所に思えてきます。

いつもの街の風景の中に見つけるアート作品

よく見ないとわからない騙し絵のような作品「日々—猫」。本間純さんの2011年の作品。
「I'm here ここにいるよ」は、2011年に作られた谷山恭子さんの作品。

たまプラーザ団地を抜けると、お散歩ガイドツアーもいよいよ後半。ここから先は美しが丘の住宅街の中に残る、『AOBA+ART』が過去6年間に行ってきたプロジェクト作品を巡ります。

作品は2011年のものを中心に、いずれも住民とアーティストとの信頼関係の中から生まれ、街に自然に溶け込んでいる心温まる作品ばかり。塀の上に取り付けられた緯度経度の座標は、谷山さんの2011年の作品。足元に目を落とせば、お散歩中のネコを発見。大きな表札だなと思っていたら、これも作品でした。

いつもの住宅街がちょっと違って見え、普段は気にも留めないものがアーティストによる作品であることを知り、アートって一体なんだろう、なんてことを考えたり、いろいろな新発見があるお散歩ツアー。これで終わりかと思っていたら、最後にもう一つ、お楽しみが待っていました。

心にじんわり染み込むアートイベント 最後のお楽しみは……

「肉のポール」の元気なお母さん。コロッケの揚げたてサービスは午後3時半から。
袋にプリントされた緯度経度の座標を確認する間もなく、ホカホカのコロッケにガブリ! 写真左はアーティストの井口雄介さん。
たまプラーザの街並み模型作品を見て、かつての駅を懐かしむ女性。

最後に訪れたのは、美しが丘ショッピングセンターで、20年以上営業を続けている「肉のポール」。「ここでコロッケを食べると、ある作品に出合うことができます。食べるひとー」と海老澤さん。「じゃあ今から揚げるからちょっと待ってね」と「肉のポール」のお母さん。コロッケが揚がるまでの間にイベントについて尋ねると、「『AOBA+ART』とは始まった時からのお付き合い。毎年いろいろね」とピースサインで応える元気なお母さん。思わずみんなも笑顔になります。

揚げたてコロッケのいい香りにガブリ! コロッケの自然な甘さと揚げたてのサクサク感は、散歩の後のおやつにピッタリ。そしてコロッケが入っていた袋に緯度経度の数字の列を見つけました! “I’m here”このおいしいコロッケが食べられるのは、世界中でここだけ。そして、私はここにいる。コロッケを食べて自分が今ここにいることを感じるって、なんだか不思議で面白い。

途中で小雨が降り出し、お天気がもつか心配しましたが、コロッケを食べ終えるころには雨も上がって晴れ間も見えてきました。「お散歩ガイドツアー」を終え、駅前のインフォメーションセンターに戻ってくると、街並みを再現した模型作品を見て昔を思い出した年配の女性が、スタッフにたまプラーザ駅の思い出話をしているところに出会いました。「駅ができた時はまだ線路と駅が同じ高さで、すごく便利だったのよ。歩いて来てすぐに電車に乗れて」と、とても楽しそうに話をしています。街の様子は変わりましたが、アートを自然に受け入れられる住民の心の豊かさは変わっていませんね。

これまでにも古着が街中を飾ったり、公園のカバが突然銀色になったり、夕食の献立を書いた看板が家の玄関を飾ったり、さらにその家に本当に食べに行くツアーがあったりと、毎年ユニークなプロジェクトで地域の人たちを楽しませてきた『AOBA+ART』。今年もまた、街の人の心の中にじんわりと染み込むアートイベントになったようです。

更新:2014年10月15日 取材:2014年9月20日

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