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東急電鉄

東急沿線イベント体験レポート 第4回おおたオープンファクトリー 2014年11月29日(土) 下丸子 / 武蔵新田

下丸子・武蔵新田周辺エリアに集う町工場を舞台に、“おおたのモノづくり”が体感できるイベント『おおたオープンファクトリー』。大学、観光協会、町工場が一体となって企画したイベントは、回を重ねるごとに内容の濃さを増しています。“技の縁、ひろがる。”というテーマのもと行われた、4度目のイベントの様子を、子育てをしながら地域で働く「Loco共感編集部」のレポートでお届けします。

レポート1

都内で一番長いという「武蔵新田商店街」。
室内ではためく鯉のぼり。新たな挑戦も大田区のモノづくりの特長。「福井精機」にて。
「福井精機」の最終検品は“人”。熟練の目と手で確認します。

確かな技術と創意工夫の
モノづくりに出会う!

普段は見られない工場を見学できる! そんな言葉にワクワクして、私にとって初めての街歩きイベント『おおたオープンファクトリー』へ。あいにくのお天気の中、ガイドさんと一緒に街歩きと工場見学ができる「モノづくりのまちめぐりツアー」に参加してきました。

ツアーの集合場所・武蔵新田駅前の「インフォボックス」で受け付けを済ませます。家族連れや友人同士など、ツアー参加者は16名ほど。ガイドさんから地図を受け取り、出発です!

街歩きする「武蔵新田商店街」は全長約1.6㎞。レトロな店構えのパン屋さんや床屋さんが並ぶ、元気な商店街です。どこからか漂ってくる、栗をいったような香ばしいにおいも、気分を盛り上げます。「新田神社」「十寄神社」を訪れ、多摩川や町の歴史を聞きながら歩くと、だんだん街に親近感がわいてきました。

商店街を抜けると、町工場の雰囲気に。開いた戸口から、切削機や金属片が見えます。初めに見学したのは『福井精機』。バイクや自動車のローラー走行テスト用ロボットを作っている工場です。工場の中には、室内でも楽しめる鯉のぼり「福六鯉」が展示されていました。ロボット製造技術を生かして作った自社オリジナル製品で、テレビ番組でも紹介されたそうです。――未来型鯉のぼり、力強く泳いでいました!

金属音が響く製造の現場には、金属棒や重機、精密な切削機械が並んでいます。図面一つで材料調達、部品製造、組み立てまで、すべて行えるノウハウがそろっているそう。そして部品の最終検品は、機械ではなく“人”。社長さんが「最後は“人間の感覚”です。機械よりも良い精度、より良いものができます」と、誇らしげに話していたのが印象的でした。

「睦化工」でもらった、おしゃれな“せっけんケース”。
まちを盛り上げる皆さんの思いが詰まった、カプセルトイにキュン♪ 「くりらぼ多摩川」にて。

モノづくりの温度に触れた
“モノづくりのまちめぐり”

続いて、多摩川沿いまで歩いて『睦(むつみ)化工』へ。ここは、マヨネーズやケチャップのフタなどを製造している工場です。白衣に着替えて入室。プラスチックの素を射出成形、検品、梱包するまでの工程が、3階建てビルのラインで行われています。200℃超の熱を帯びたプラスチックが金型に注入され、数秒後に“パカッ”と生まれてくる様子は、手品のよう。子どもが見たら、目を丸くしそうです。出来立てホヤホヤのせっけんケースはほのかに温かく、まだ少し軟らかい!
「それ、お土産にどうぞ」
「ありがとうございます~」
手渡しでもらったせっけんケース。出来立ての温かさは、そのまま作った人の温かさに感じられました。

ツアーの最後は「くりらぼ多摩川」。ここで解散となり、学生がアイデアを出し、町工場の人たちが作ったカプセルトイ「モノづくりたまご」をお土産に頂きました。私がもらったのは“鋼のハート”キーホルダー。「これを引き当てたあなたはとても幸運」というメッセージが付いていました。ウキウキの素をもらい、ツアー終了! 貴重な体験の連続で、あっという間の2時間半でした。

「モノ・ワザ ラウンジ」でも女性の姿が多く見られました。
町工場の人たちの生の声を聞くことができた「モノ・ワザ トーク」。
毎年大人気の「モノづくりたまご」。200コがあっという間に品切れに!

見るも良し、聞くも良し!
モノ・ワザ ラウンジ

ツアー後は、雨の中、足を延ばして「モノ・ワザ ラウンジ」へ。展示スペース「モノ・ワザ ギャラリー」には、大田の町工場の技術・特長を生かしたさまざまな製品と、カプセルトイ「モノづくりたまご」のアイテムが並んでいます。「これも絞り加工?」「こんなのができるんだ」と、ついさっき加工体験をしてきた人も驚きの声。いろいろな年代の人が見学していましたが、学生や女性が多いこと! モノづくりの仕事に関心を持つ人や支えたい人は、若い世代にも多いのだと気付きました。――日本のモノづくりには未来がある! 大げさだけどそんな気持ちになり、この後の「モノ・ワザ トーク」を聞いてみました。

「モノ・ワザ トーク」は職人たちのトークセッション。この日最後に行われたのは、「下町ボブスレーネットワークプロジェクト」中心メンバーの社長2名と、『おおたオープンファクトリー』の主催団体の一つ「工和会」の社長2名によるものでした。「モノを作っても、機密関係で展示会に出せず、社外にアピールできない」と閉塞感を感じていた大田のモノづくり業界。この課題をどうクリアするのか? 「下町ボブスレー」の取り組みを例に、現状突破の気概をお互いに話す場となりました。

すべて自分たちで作れば、技術を見せられる――。ジレンマを打破するために始めたのは、オリンピック競技として特に欧米で認知度が高く、日本企業があまり参画していない“ボブスレー”づくりでした。バブル経済崩壊後に社長交代した若い世代を中心に、大田区産業振興協会などと協力してプロジェクトを推進。職人同士の横のつながりと技術力で、実質1カ月、加工費0円で作ったというから驚きです。

現在、ボブスレーにかかわる加工企業は70社、参加協力企業は200社にも及びます。それでもまだ、大田の町工場は徐々に減っているのが現状といいます。まだまだ現役を続けられる職人さんたちに、どうやって前向きになってもらうかなど、課題は尽きません。しかし、トークセッションの末に、「退職しても元気な“作りたい人”の技術や経験を、若い“作りたい人”に伝えてもらう」という答えが見えてきました。

強い意志を持ったモノづくり。町工場の皆さんのパワーを感じながら会場を出ると、雨はやみ、分厚い雲がうっすらと夕日に染まっていました。

文:廣田あきこ(Loco共感編集部)

レポート2

「ぼくだってできるよ」と、ステンレスの板を“絞り”の技術でフライパンの形に。「小林運送」に設けられた「北嶋絞製作所」特別出張工場にて。
「いつもより少ない出力だけど、ゴーグルを着けてよく見てね」。「多摩川鈑金工業所」ではコースターにレーザーで文字を入れながら、説明をしてくれました。

逸品は大田の“仲間回し”から生まれる

たくさんの町工場が軒を連ねる、下丸子・武蔵新田周辺エリア。金属加工ひとつとっても、切削、穴あけ、溶接、研磨と、得意とする技術はさまざま。そんな町工場同士が力を合わせ、ひとつの製品を作り出すことを、大田の町工場では“仲間回し”と言うそうです。この“仲間回し”を体感すべく、4つの工場を回ってフライパンを完成させる「仲間回しラリー」に参加してきました。

「モノ・ワザ ラウンジ」でチケットを購入し、一つ目の工場に向かいます。ラリーの始まりは、「北嶋絞製作所」でフライパンの本体作り。フライパンの素となる平らなステンレス板が、どうやってフライパンの形になるのか。わくわくしながら、順番を待ちます。

いざ軍手と青い作業服を身に着けると、すっかり“匠”気分に。長いヘラ棒を脇腹に挟み、その先を回転するステンレス板に押し当てます。シュルシュル……と、静かな音を立てながら、思ったより滑らかに板が変形しました。これが“絞り”と呼ばれる技術です。初めてにしては上出来……と思いきや、実は後ろで北嶋隆之さんが、体まで絞り上げられるんじゃないかという姿勢で、しっかりとリードしてくれていました。だからこそできる技で、5分ほどで出来上がり。ある小学生は、出来立てのフライパンを手のひらに乗せて、「難しくなかったよ。温かい」と笑みを浮かべていました。

次は、フライパンの取っ手作り。「多摩川鈑金工業所」の“複合機”と呼ばれる機械で、柄の部分を“板金”してもらいます。工場の真ん中に置かれたこの機械は、実に存在感があり、レーザー光線を出しながら横に大きくスライドしていく様子は、なんだか宇宙船のよう。時間の関係で、取っ手は板金済みのものを頂きましたが、その代わりに加工の様子を、コースターにレーザー光線で文字を入れながら、説明してくれました。

プラスチック加工を行う「シナノ産業」。2つの部品をはめ合わせて、取っ手カバーの装着完了!
「共栄溶接」でフライパンの本体と取っ手がひとつに! この器用そうな指先で、美しく“溶接”されました。
ついにフライパンが完成! 食品サンプルを乗せたら、フライパンらしさが倍増しました。

町工場の人たちの生の声を聞く

3番目の工程は、「シナノ産業」で取っ手のカバー付け。“4th OTA OPEN FACTORY”と印字された、プラスチックのカバーを取り付けます。優しい笑顔で説明してくれた熊谷誠さんに、ここで働き始めたきっかけを聞いてみました。「小さいころからプラモデルが好きだったというのと、社長の人柄に引かれて、この工場に入ったんですよ」と熊谷さん。社長さんの人柄は、仕事環境の良さにも表れているそうです。その後、“同時5軸”という機械の動く様子を見学。切削する機械と作業台が同時に動く、コンビネーションの良さにはびっくりしました。

最後の工程は、「共栄溶接」での取っ手の“溶接”。溶接マスクを付けた波田野哲二さんが、手際良くフライパンの本体に取っ手を付けてくれました。アルゴンガスを使用しているので、大きな火花を飛ばさずに、接着できるのだとか。この工場での溶接は、ビード(溶接跡)の美しさが自慢。「手作業だからこそできる技なんですよ」と、話してくれたのは、哲二さんの父親で代表取締役の波田野寿好さん。4年前から哲二さんがここで溶接技術を学んでいることについても、うれしそうに語ってくれました。大切な技術も、次世代の人につないでいかなければ消えてしまいます。私からも哲二さんに、エールを贈りたいです。

ついにラリー完走! ゴール記念に頂いた「イワサキ・ピーアイ」の食品サンプルを乗せて、『おおたオープンファクトリー』オリジナル・フライパンがついに完成しました。

「おおたものづくりセット」はコップ、缶、佃煮、お酒と、どれも大田の逸品!
演奏会で使われた楽器“ブリッヂ”。演奏者の松本“yao”善行さんの図面をもとに、「いわき精機製作所」の小宮さんが制作。

モノづくりで終わらない大田の魅力

フライパンが無事完成したところで、「くりらぼ多摩川」に寄ってみました。ここは、工場長屋の一部を改修してつくられた地域交流スペースで、“工場棟”と“事務所棟”の2つの空間があります。

“事務所棟”は、お茶と軽食のほか、お酒も楽しめるカフェになっていました。『おおたものづくりセット』を注文すると、大田の工場で作られた、フタを開けても手の切れない缶と、絞りの技術で作られたカップで、羽田の佃煮とおおたのお酒が登場。出てきたモノをじっくり見ていると、作り手の顔が浮かび、モノづくりに対する心意気が伝わってきます。ここは気の利いた演出がされている場所だなあと思いました。

隣の“工場棟”では、「いわき精機製作所」の小宮祐樹さんが作った楽器“ブリッヂ”を使っての、演奏会が始まりました。楽器の中のパイプに響く音が、アフリカ伝統音楽の旋律に乗って、体幹に心地よく伝わってきました。

今日のラリーで出会った町工場の人たちの温かさと、技術の結晶で作られたものは、大田の町の魅力を十分、感じさせてくれました。

文:福岡尚夏(Loco共感編集部)

更新:2015年1月14日 取材:2014年11月29日

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